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○ 職人 metiist, artisan

  職人には、親方 maystr,master、職人 metiist,journeyman、徒弟 aprentic,apprentice の3大階級があります。それぞれが、また細かい格に分れていますが、ここでは省略します。年季奉公の見習徒弟から始めて、長い修業の後に職人となって、諸國を遍歴し、名高い親方のもとで渡り職人を勤めて腕を磨きます。同業組合の試驗に合格すると親方になり店を構え、職人を雇い、徒弟を育てます。親方になるのは難しく、ならない職人の方が多くて、そういう人たちは自分で小店を開業して、それなりの評判をとっています。

《鍛冶屋》 forghist, smith
  村に無くてならないものは、鍛冶屋です。鐵をはじめとして、金属なら何でも加工・修繕します。農具の他に、錠前や鐵砲のように複雑な細工も得意です。親方と渡り職人1〜2人、徒弟で店を開いています。各小區には別に「野鍛冶」と呼ばれる職人がいて、徒弟と2人で店を開いています。簡單な細工や馬の蹄鐵打なら、ここで十分です。

鎖造り

金具造り

蹄鐵造り

前時代の彈丸造り

《大工》 charpentist, carpenter
  柵造りや雨漏り修理など、ちょっとした大工仕事なら村人は自分でやってしまいますが、家の普請・大掛りな修繕・こまかい細工は、本職の大工でなければ到底うまく出来ません。各小區に職人(手傳大工)がいて、大きな請負のある時は村の親方大工(棟梁)が、これらを集めて段取りを作り、作業を進めます。

《石工》 shtonchizist, mason
  家の礎石や壁、門柱、塀、庭園の敷石、など石細工ならなんでも引受ます。瓦も葺けば、墓石も作り、彫刻も得意です。石工組合は職人仲間のうちでも殊に強力で、普請があると直ぐに大勢の助っ人を寄越してくれます。

《左官》 stukist, plasterer
  壁の漆喰塗りの他に、塗装も兼業します。

《車大工》 radfarist, wheelwright
  馬車・荷車の木製車輪の製造・修繕をするほか、樽や水車・風車も作ります。

《馬具屋》 yungilist, harness maker
  轡、手綱、鐙、鞍、手入具、拍車、鞭など馬具の製造・修繕をします。馬の需要は多いので、繁盛しています。頑丈な皮服・鞄・革帯も作ります。

《時計屋》 horloghist, watch fixer
  時計の修繕・販賈をします。大きな箱時計・掛時計から置時計・懐中時計まで、なんでも扱います。上等の金時計・銀時計や寶石入時計は退職記念などの贈物として需要があります。銘を入れてくれます。最近は腕時計が人氣です。また温度計・湿度計・氣壓計・壓力計・風向計など計器も器用に扱うので、重寳なお店です。注文に應じてちょっとした仕掛け玩具や模型を造る職人もあり、なかには本業よりそっちの方で有名な店もあります。

時計屋の店先
時計屋

《仕立屋》 kudrist, tailor
  農場主以上の小金持を相手に洋服の仕立てをしますが、儲けは主に布地を賈って得ます。地主や領主は都會で服を誂えます。小作以下の貧乏人は古着で我慢します。

《帽子屋》 chapelfarist, hatmaker
  洋服を着れば、おおよそ帽子を被らない者はいません。注文に應じて帽子を誂え、既製品も扱います。

《靴屋》 shufarist, shoemaker
  職人の造る革の靴とサンダルは頑丈で、ときどき修繕すれば長く履けます。各小區に職人がいて、ぴったりの履物を誂えてくれ、いつでも修繕してくれます。

《麺麭屋》 panfarist, baker
  大きな竈でパンを作ります。手の込んだ菓子や堅麺麭(ビスケット)も焼きます。小麥粉を持って行けば、同じ重量の麺麭を焼いてくれます。ただし5分を手間賃に差引いてあります。麺麭は辨當用に持って歩けるので野良仕事に缺かせません。朝晩、たいていの農家は自分で小麥粉を水で溶き雑穀を混ぜて、種のないペタンコの麺麭を焼きます。三食とも麺麭屋の白麺麭を食べるのは主に月給取や商賈人など現金収入のある人々です。
庶民にとっては、むしろ麥を煮込んだ具澤山の粥(ごった煮)が主食で、麺麭は贅澤品の部類に入ります。自家製の堅い黒麺麭さえ無制限に食べられると云うものではなく、まして柔らかい白麺麭は餘程の事がない限り食卓にのぼりません。

《肉屋》 buchist, butcher
  昔は農家は自前で精肉をしましたから、非農家用に精肉を提供していました。しかし血抜き皮剝ぎ部位ごとの分類など熟練と細かい知識が要る作業はやはり肉職人でないと巧くできないので、大きな家畜などは農家でも肉屋に預けています。ちょうど魚屋が鮮やかに捌いた魚肉が旨いのと同じです。

《床屋》 barbir, barber
  農夫は自分で髪を刈ってしまい、鬚も伸ばし放題か自分で剃るので、専ら農場主以上の田園紳士連中の髪や髭を整えます。ついでに髪染、爪の手入、耳掃除、鼻毛剪もします。店は小區に必ず1軒はあり、呼ばれれば出張もします。出張専門の高級床屋も1人はいて、助手を引連れてお得意先を廻ります。

《寫眞師》fotografist, photographer
  記念寫眞や記録寫眞を撮ります。

《髪結》
  淑女の髪を洗って結い上げます。あとは床屋と同じです。餘り元手は要らないので、有力なお得意先を持ってこまめに通えば相當の収入になります。

《葬儀屋》 funebrist, undertaker
  村では葬儀が月に4回くらいあって、その全般を取仕切ります。遺體を清め、修復し、納棺して、埋葬します。柩は住込職人を雇っており、石工に墓石の製作を頼み、村役場に諸届を濟ませ、墓堀人夫を手配し、霊柩馬車を仕立て、聖職者に祈祷を頼み,参會者への禮状書きなど後始末も萬端處理します。


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