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禮式

禮式
→尊稱
敬禮
→室内の敬禮
→室外の敬禮1: 單獨の敬禮
→室外の敬禮2: 部隊の敬禮
→端船の敬禮
→衛兵の敬禮
→歩哨の敬禮
→奏樂(準備中)
儀式
→儀杖
→迎送式
→伺候式
→觀兵式
→禮砲式
→命課布達式
→離任式
葬法
→會葬式
  「陸軍禮式令」は、どう云う時に敬禮しなければならないかに始まって、誰に対しては喇叭や軍鼓、禮砲をどのように鳴らさなければならないかに至るまで詳しく規程しています。以下にその要旨を解説します。  → top
【尊稱】

次の様に區分して使用します。

閣下: 國家元首、将官・同相當官、親任文官・勅任文官
殿:  佐官・同相當官以下、奏任文官以下

陛下: 王族(王、王妃、王太妃など王の尊属)
殿下: 王族(王子、王孫、太公など王の尊属以外の王族)

直接に呼びかける時: 「陛下」「殿下」「大将閣下」「大尉殿」「曹長殿」
他人との話の中で引合いに出す時、または數人の上官居合せる所で、その一人に呼びかける時: 「A王子殿下」「B中将閣下」「C少佐殿」「D軍曹殿」
場合により職名で讀んでも可: 「軍司令官閣下」「聯隊長殿」「班長殿」

(注意點)よびかけ以外には、尊稱を使用しません。
例えば
将官宛に佐官が公文書を呈する時: 宛名は尊称の「閣下」ではなく、公文書で通常使用する敬稱の「殿」となります。
大隊長が職務上、聯隊長の命令を他人に傳達する時: 「某大佐殿の命令」や「聯隊長殿命令」ではなく尊称を附けず職名を使って單に「聯隊長の命令」や「聯隊長命令」と云わなくてはなりません。
二等卒が軍曹に向い某上等兵のことに言及する時: 「某上等兵殿が」ではなく、尊称を除いて「某上等兵が」と云うのが正確です。


【稱呼】
上級者が下級者・新任者に呼びかける時: 直接間接を問わず、「姓と官(職)名」あるいは「姓」を呼ぶのが望ましい。官職名の無い者には等級名で可です。場合により單に官・職・等級・特業・勤務上の呼稱のみを使用することがあります。また代名詞を使っても差支ありません。
「A大尉」「B伍長」(官名: 下士以上の階級名は官名)
「C鼓手」(職名: 鼓手は雑卒なので官名も等級も無いので職名を使う)
「D二等卒」(等級名: 上等兵・一等兵・二等卒は階級名(官名)ではなく等級名。官名で「D兵卒」と呼ぶのもヘンなので、等級名で呼ぶ)
「看護卒」(特業名: 負傷者が出た時は「看護卒、前へ!」となります)
「衛兵」(勤務上の呼稱: 當番で各中隊から出てきて日により顔ぶれが變り、名前が分らない場合が多いので、上官が呼ぶ時はこうなります)
「君」「御前」(代名詞: 「貴公」「貴様」と云うのもあり、幼年學校出身者が好んで使います。)

自分の事を指して云う時は、「自分」(會話で使用)「餘」(司令官が命令文の中で使用)と云うのが普通です。海軍は「自分」の代りに「私」を使います。(「俺」「儂(わし)」と云うのもあり、幼年學校出身者や古参者が好んで使います。「僕」は貴族出身者が稀に使いますが、餘り歓迎されません。)
自分の姓を使いFならば「Fは云々」と云うのも、よくあります。暗夜とか、教練中、戰闘中などには便利です。 申告などする時は、
「F伍長は」と 自分の姓・官名を云います。  → top


【敬禮】salut, salute

《どちらが先にするか》
   軍人は互いに敬禮します。相手が上官の場合は、こちらから先に敬禮をします。そして上官が敬禮を止めるのを待ちます。相手が手を下ろすと、初めてこちらも敬禮を止めます。逆になると大變な失禮(無禮)をした事になります。最初から敬禮をまるきりしない(缺禮)のでは、お話しになりません。上官は下級者に敬禮をチャンとさせるよう、いつも氣を付けておき、間違いをした時には訂正するように規程されています。

「禮式非違者處分方」陸達20
1 下級の者缺禮するときは受禮者は其所管隊號姓名を問い自己所属の長官に上申し長官より缺禮者所管長官に照會し其所管長官は夫々處分の上其趣原告長官へ通知すべし。
2 下級の者敬禮を行ふに方り其方式に違うときは其の所管隊號姓名を問ひ違式者所管又は本隊に其趣を通知し其の所管又は本隊に於ては厳に違式者を教戒すへし
但し受禮者下士なるときは自己の所管長官又は隊長に其の趣を上申し其の所管又は本隊より違式者所管又は其本隊に通報すへし

   上官も敬禮された場合は、答禮しなければなりません。
   階級が自分より上のものは上官となりますが、「上等兵・一等卒・二等卒・雑卒」は全等級をまとめて「兵卒」と云う一つの階級ですから、互いに敬禮する時は後先の考慮は不要です。
   上級者のとるべき職を代理する場合でも、現在の階級に對しての敬禮を受けます。(12)

《生徒は?》
   士官學校生徒の身分は隊付が基本で、所属隊から士官學校に生徒として派遣される形をとりますので、隊付勤務中(現場實習のようなもの)に士官候補生として兵卒から軍曹まで順を追って進級し、さらに見習士官として曹長となります。従って敬禮は今ある階級より見て上官に對し先に敬禮し、下級者には答禮を返せばよいわけです。
   幼年學校生徒は一等卒相當の軍属扱いですから、相手が下士官以上なら誰にでも先に敬禮しておけば可です。

《上等兵は下士なみ》
   上等兵は下士と同一の敬禮を受けます。(15)

《同階級どうしは?》
   互いに同じ階級の場合は、どちらが後先という事なく兩方から敬禮します。役種(豫備役後備役など)は關係がありません。どちらが先に手を下ろすかの規程はありませんが、古参者から先に敬禮をやめるのが自然です。目安としては士官學校の卒業期が古いか新しいかが基準となりますが、學校出ではない准士官出身者などは年齢で判断するのが一般的です。士官學校出身者でも准士官出身者が自分より年上ならば、こちらから先に敬禮し、相手が敬禮を止めるのを待って初めてこちらも敬禮を止めるのが常識です。

《相手がよく識別できない時は?》
   遠距離、夜間、服装によって相手の階級が判別できない時は、どちらが先ということなく互いに敬禮します。(3)
   部隊・衛兵の敬禮は、夜間には行いません。(7)

《相手が一人でない時は?》
   二人以上の軍人に對する時は、最高級者に対し相當の敬禮をします。答禮は、その最高級者のみがします。(5)

《こまかいこと》
   答禮は場合により省略できます。(挙手注目あるいは刀禮を單に注目に代えるなど)(2)
   相手が異装・私服でも、面識あれば「單獨の敬禮」をします。(4)
   「國歌」の奏樂を聞く時は直ちに姿勢を正します。(4)
   軍旗は敬禮時には覆を取去り立てた状態にします。(8)
     外國の君主に対しては、公式の場合に限り、國家元首に準ずる敬禮をします。(9)

《陸軍以外の軍人は?》
   海軍・民兵の軍人・軍隊、親和諸國の軍人・軍隊にも、陸軍禮式を適用します。(11)

《軍属は?》
   軍に勤務する文官・雇用者を軍属と云い、陸軍禮式を適用します。法務部の法務官や看守、宗務部の聖職者には制服がありますので、敬禮は軍人と同じ式です。
   制服の無い陸軍教授、酒保商人、洗濯職などは、室外においては「挙手注目」の代りに「脱帽注目」とします。(「陸軍軍属敬禮」陸達113)  → top


【室内の敬禮】
   室内にいる時は、「室内の敬禮」となります。室外(野外)でも帽を被っていない時は、この敬禮となります。(「挙手の禮」は騎士が鉄兜の面覆を右手で跳ね上げて相手に顔を見せ挨拶した事から始まったので、帽子あるいは被り物無しの「挙手の禮」は有り得ない)(室内とは、居室・事務室・應接所など部屋になっているところを云い、廊下・階段・炊事場・厩などは室外になります。しかし宮廷や教會は、すべて「室内」扱いです。)(16)
圖1(室内の敬禮)参照:    姿勢を正し、15度上体を前に傾け、お辞儀をします。顔は相手に向けたまま、目は相手の目を見たままです。(海軍は顔も下方を見て視線を合わせない)(18)
   「最敬禮」は、
お辞儀の深さが45度になります。これは國家元首や貴賓を迎える時など餘程特殊な場合です。
   執銃している時は、「立銃」して姿勢を正します。お辞儀はしません。(30)
   「室内」に入る時は、
帽を脱いで右手に提げます。帽は前庇をつまみ、垂直に提げ、帽の内部を右脚に向けます。帯刀している時は、柄を後ろにして両環の間を握ります。(17,18)
   上官の居室に入る時は、
上官の席から5・6歩のところで敬禮します。もし上官が2人以上いる時は、先ず最高級の人に敬禮し、次に他の一同にまとめて敬禮します。居室から出る時も同じです。(19)
   上官と書類の授受をする時は、
1. 敬禮 2. 上官の方に適宜、前進 3. 帽を左脇に挟み 4. 右手で書類を受取り、あるいは呈し(執銃の時は、左手で) 5. 受領した書類は左手を添えて讀み(執銃の時は、銃を體に託し右腕で支え、右手を添えて讀む) 6. 讀み終ればすぐに書類をしまいこんで 7. もとの位置に戻り ?(返書・受領證などを貰うべき時は、そのまま 待つ) 8. 敬禮 9. 退去する。(20,21)
辞令・賞状などをもらったら、その場で披(ひら)いて中を見みます。
   上官と会話する時は、
1. 敬禮 2. 上官の方に適宜、前進 3. 會話 4. もとの位置に戻り 5. 敬禮 6. 退去する。(22)
   人が居室に訪ねて来た時は、
?座っている者は椅子から離れて敬禮(相手が下級者の時は、座ったまま相手の敬禮に答禮する) ?来訪を受けた本人以外は、着席して事務に服す ?室内で話す時は、下級者は椅子を離れて立ち姿勢を正す(上官の許可があれば着席可) ?相手が歸る時は、同室者全員が椅子から離れた状態にて敬禮(相手が下級者の時は座ったままで可)(23,24,25)
   将校が下士卒の居室に来た時は、
1. 最初に将校を認めたものが「直レ」と他の者の注意を喚起し 2. その室にあるもの全員は、その場に立ち姿勢を正し「注目」する(事務室・講堂では、その必要はない) 3. 将校は下士卒の居室に入る時は脱帽の必要がなく、「擧手注目」の答禮をする(脱帽している時は、「注目」の答禮となる)(27,29)
點呼で、週番士官が内務班にくる時は、
豫め整列しておき、班長の號令で「注目」をします。
   會合にて上官と同席する時は、上官より先に椅子に座ることなく、先に食卓に就くことなく、先に食卓を離れることなく、先に喫煙することがないようにします。(28)
   上官より宴會などに招待された将校は、到着・退散の時には帯劍して挨拶します。(28)
   國家元首に拝謁する時は、
1. 入室時に敬禮 2. 約6歩のところまで前進 3. 敬禮 4. 所用を濟ませ 5. 二・三歩後ずさりし 6. 右に向きを變え 7. 出口に前進 8. 敬禮 9. 退去(26)  
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【室外の敬禮1:單獨の敬禮】
   室外では「擧手注目」となります。姿勢を正し、右手を擧げ、指を揃えて伸ばし、人差指と中指を帽の前庇に當て、掌(てのひら)をやや外側に向け、肘を肩の高さに等しくして、受禮者の目(または敬すべきもの:軍旗など)に注目します。(31)
圖2(擧手注目)参照
   執銃の場合は、そのまま「執銃」して姿勢を正し、(行進間の時は歩調を取り)頭を受禮者の方に向けこれに注目します。(49)(ただし國家元首に對しては、停止し「捧銃」となります。輕機關銃や輕擲弾筒では「捧げ銃」が無理なので、兵器は地上に置くか、體に吊るしたまま「擧手注目」の禮にします)(31)
圖3(執銃)参照
   抜刀している者は「肩刀」にて姿勢を正し(行進間の時は歩調を取り)受禮者に注目します。(ただし将校が國家元首および軍旗に對する時、または隊伍にある時は、「捧刀」(肩刀から刀を垂直に上げ、刃面を顔の中央に向け、鍔を口元の高さに掲げ、臂は體に自然に接する)から「刀禮」(そのまま刀身を右下の地面を指し示すように下げ、受禮者または軍旗に注目する)となります。)(47)
   銃刀以外の物を携帯し右手を擧げる事ができない時の敬禮は、ただ「注目」だけで可です。(51)
   憲兵下士上等兵は職務執行中で已むを得ない時、敬禮を行いません。(52)
   上官が窓邊より外を見ている前を通過する時は、敬禮します。(逆に當方が窓邊から、その前を上官が通過するのを認めた時も敬禮します)(32)
   當方が停止している時、上官が傍を通過する時は、上官に正面して、敬禮(ただし武装した下士卒は「立銃」ないし「肩刀」にて受禮者に注目)します。(33)
   停止している上官のもとに行く時は、5・6歩前で立止まり、受禮者に正面して、敬禮します。(ただし武装した下士卒は「立銃」ないし「肩刀」にて受禮者に注目)(34)
   所属團隊長(所属衛戍司令官および所属中隊付士官を含む)に行遭い、またはその傍を通過する時は、「停止敬禮」をします。(下士卒は受禮者の約6歩前より姿勢を正し、約3歩手前で停止し、受禮者に正面して、敬禮。)(36)
   國家元首の外出に出會った時は、前驅の護衛が来る前に道路の一方に停止し、(乗馬者はその儘で、乗車者は下車。國家元首が非公式の外出である場合は、乗車のまま敬禮して可)元首の方に正面し、相手が6歩前に近づいた時に敬禮します。相手が6歩過ぎる時まで、そのまま敬禮を續けます。(ただし執銃者は「捧銃」、帯刀者は「捧刀」)(35)
   軍旗に行遭い、またはその傍を通過する時は、これに敬禮します。(下士卒は軍旗の約6歩前より姿勢を正し、約3歩手前で停止し、軍旗に正面して、敬禮。)軍旗に上覆を附してある時は、敬禮しなくとも可。(36)
   上官の引率する部隊に行遭い、またはその傍を通過する時は、隊長に敬禮をし、その隊に注目します。(服務中の儀杖隊に對しては、隊長にも隊にも敬禮をしない。會葬の儀杖隊に対しては、死者の官職の如何にかかわらず柩に對してのみ敬禮する。(38))(37)
   部隊の敬禮を受けた時は、その隊長に答禮します。(37)
   後ろから上官を追抜く時は、先行する許可を請い、その後はじめて通過します。(39)
   乗馬し馳歩または速歩で行進中、上官に遭う時は、常歩に移し敬禮をします。(ただし傳令使などで至急の公務を執行する時は、その事由を告げ、そのままの歩調で行きます)(40)
   乗車中に上官に遭う時は、乗車のまま姿勢を正し敬禮します。(ただし自轉車に乗車中は、「擧手注目」を「注目」に換えて可)(41)
   上官と書類を授受する時は、?上官より5・6歩のところで停止し、(上官が乗馬していない時、乗馬者は下馬。上官許可ある時は下馬不要(44))、上官に正面し 1. 敬禮 2. 適宜、前進 3. 右手で書類を受取り、あるいは呈し(執銃の時は、左手で) 4. 左手を書類に添えて讀み(執銃の時は、銃を體に託し右腕で支え、右手を添えて讀む) 5. 讀み終ればすぐに書類をしまいこんで 6. もとの姿勢に戻り(返書・受領證などを貰うべき時は、そのまま 待つ) 7. 敬禮 8. 退去。(42)
   上官と會話する時は、 1. 上官より五・六歩のところで停止し、(上官が乗馬していない時、乗馬者は下馬。上官許可ある時は下馬不要)、上官に正面し 2. 敬禮 3. 適宜、前進 4. 會話 5. もとの位置に戻り 6. 敬禮 7. 退去。(43)
   上官と同行する時は、その左側に就きます。2人以上が同行する時は、両側または後方に就きます。(ただし誘導者は、その限りにあらず)(45)
   舷梯を降り端艇に乗込む時は、下級者より先にします。(45)  
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【室外の敬禮2:部隊の敬禮】
   一人で行動する時は「單獨」ですが、二人以上になると部隊」となります。最上級者(同一階級の場合は先任者)が敬禮の指揮をとり、號令を掛けます。
   「武装せざる部隊」(銃を持たない歩兵、帯刀していない乗馬兵など)の敬禮は、停止間は隊列を正し、行進間は行進を止めず、「頭右」の號令にて他隊に注目し、その隊長は互いに「擧手注目」の敬禮を交します。
   「武装せる部隊」停止間の敬禮は、隊列を正し、「頭右」の號令にて他隊に注目し、その隊長は互いに敬禮(帯刀者は「刀禮」、執銃者は「捧銃」)を交します。隊員は「肩刀」ないし「捧銃」あるいは「擧手注目」し、喇叭手もしくは笛手あれば「國の護り」を吹奏、鼓手あらば「敬禮」を打鳴らし、その數は1回。(55)
   「武装せる部隊」行進間の敬禮は、行進を止めず、「頭右」の號令にて他隊に注目し、その隊長は互いに敬禮(帯刀者は「刀禮」執銃者は「執銃」のまま「注目」、あるいは「擧注目」)を交します。隊員は「肩刀」「執銃」のまま「注目」あるいは「擧手注目」します。(54)
   部隊どうしが相遭う時は、互いに敬禮します。停止間と行進間にかかわらず、先に敬禮するのは: 隊長の階級が下の部隊、軍旗ある部隊に対する軍旗なき部隊。隊長の階級が同じであれば、先後の別なく兩方からします。大隊以上の部隊は中隊ごとに敬禮します。(ただし服務中の儀杖隊、會葬の儀杖隊とは敬禮を交しません)(53)
     「将校の引率せる部隊」が「下士卒の引率せる部隊」に對する敬禮は、隊長のみが答禮します。(58)
   部隊は隊長より上級の軍人に對し敬禮します。隊長より下級の軍人より部隊が敬禮を受けた時は、隊長のみ答禮します。(ただし服務中の儀杖隊、會葬の儀杖隊は特に明文規程ある以外は何人にも敬禮をしません)(59)
   儀杖隊を附した軍人の葬儀に遭う時は、柩に対し敬禮をします。(もし死者の階級が隊長より下級ならば、隊長のみ敬禮。儀杖隊側は敬禮をしない)(60)
   「禮拝」する部隊は、祭壇に向い整列し、帯刀者は「捧刀」、執銃者は著劍して「捧銃」、其の他は「不動ノ姿勢」を執り、隊長は「刀禮」を行い、軍旗も「敬禮」(旗を前に垂れる)をし、喇叭手、笛手、鼓手あれば「神ヨ吾等ヲ護リ給ヘ」3回を吹奏します。(61)
   「國軍總司令官」に對する、停止間の敬禮は「禮拝」とほゞ同じです。
   異なるところは、1. 受禮者の通過する方に面して整列(ただし乗馬兵・乗車兵途上縱列にある時は、そのまま敬禮して可) 2. 吹奏するのは「國歌」で、總司令官が隊列に約30歩のところに来た時に吹奏を始め、約15歩過ぎたところで止めます。3. 敬禮の開始停止も同じ時機に行います。 4. 儀式に参加した部隊は國軍總司令官に對するほか敬禮を行う事無し。(國軍總司令官が非公式の外出である場合は著劍を省略して可)(63)
   「國軍總司令官」に對する行進間の敬禮は: 1. 直ちに停止 2. 道路の一側に整列 3. 停止間の敬禮を行う 4. 再び行進を始める。(國軍總司令官が非公式の外出である場合は、2. と著劍を省略して、行進時の隊形のまま敬禮して可)(71)
   「将官」に對する、停止間の敬禮は「武装せる部隊相互の敬禮」に同じです。異なるところは: 1. 受禮者が隊列に約10歩のところに来た時に敬禮を開始し、約5歩過ぎたところで止めます。 2. 将官相當官に対しては隊長のみ敬禮する 3. 喇叭・笛は「知略縦横勇猛果敢」を吹奏し、その回數は:
4回 元帥
3回 陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官
2回 陸軍中将
1回 陸軍少将准将(64)
(受禮者が突然に隊の左翼から来た時は、中隊各個に敬禮を行う。受禮者の職が分らない時は、喇叭手・笛手の吹奏は官等(階級)に應ずる回數を、官等も確認できない時は單に1回吹奏する)(65)
   「将官」に對する、行進間の敬禮は「武装せる部隊相互の敬禮」に同じです。異なるところは: 1. 受禮者が隊列に約6歩のところに来た時に敬禮を開始 2. 将官相當官、准将に對しては隊長のみ敬禮する。 3. 喇叭・笛は「勇敢ナル兵士ヲ見ヨ」を吹奏し、その回數は1回。(72)
   「上長官」(佐官)「士官」(尉官)に對する、停止間および行進間の敬禮は「武装せざる部隊」の敬禮を行い、隊長のみ刀禮を行います。(ただし「相當官」に對しては、隊長のみが刀禮を行い、部隊は敬禮しません。(66)(73)
   「所属隊長」(代理者を含む)に對する、停止間および行進間の敬禮は、その部下に限り「武装せる部隊」の敬禮を行います。受禮者が隊列に約10歩(行進間は約6歩)のところに来た時に敬禮を開始し、約5歩過ぎたところで止めます。(ただし喇叭・笛・軍鼓の吹奏はなし)(67)(75)
   行進する2部隊が途上で行遇う時は、互いに道路の右側を通って通過します。(76)
   「衛兵」の前を通過する時は、中隊または小隊各個に敬禮を行います。ただし下士以下が司令である衛兵に對しては、敬禮を行いません。(78)
   歩哨より敬禮を受けた時は、隊長のみ答禮します。(78)
   作戰のため行軍途上にある部隊は、國軍總司令官のほか何人に對しても敬禮をせず、ただその隊長だけが互いに敬禮をします。(國軍總司令官には行進間の敬禮を行う)(80)隊列を解き休憩中の時は、各自單獨の敬禮を行い、場合により省略しても構いません。(81)
   練兵場・射撃場・作業場にて演習中に國軍總司令官が親臨あるを最初に認知したる隊長は: 1. 喇叭手ないし鼓手に「氣ヲ付ケ」の號音を命ず。 2. 各隊は演習を止め 3. その場で「國軍總司令官に對する停止間の敬禮」を行う。 4. 各隊長は馳歩で總司令官の許に至り、演習の次第を奏上する。 5. 勅命あるか、または總司令官がその場を去るまで、演習は再開せず。 6.總司令官がその場をさる時には、再び「國軍總司令官に對する停止間の敬禮」を行う。(83)
   練兵場・射撃場・作業場にて演習中に元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官が来たのを最初に認知したる隊長は: 1. 喇叭手ないし鼓手に「氣ヲ付ケ」の號音を命ず。 2. 各隊は演習を止め(休憩中の時は叉銃を解き執銃し、乗馬部隊は乗馬して、整列する) 3. その場で「将官に對する停止間の敬禮」を行う。 4. 各隊長は馳歩で當該將官の許に至り、演習の次第を陳述する。 5. 別命なければ、演習を再開する。(84)
   練兵場・射撃場・作業場にて演習中に兵監・司令官・團隊長が来た時は、その管轄下の部隊に限り: 1. いったん演習を止めて姿勢を正し(休憩中の時は、その場で姿勢を正すのみで、執銃・乗馬の必要なし(86))  2. 各隊長は馳歩で當該兵監・司令官・團隊長の許に至り、敬禮を行い、演習の次第を陳述する。 4. 別命なければ、演習を再開する。(85)
   野外演習・特別演習の實施中或いは戰闘中は部隊の敬禮を行いません。(88)  
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【端船の敬禮】
   受禮者の船に対し、帆走の場合は帆を降ろし、端船長は敬禮し、受禮者の船が過去った地、再び以前の航進に戻ります。櫓手は櫓を収めません。便乗者は敬禮せず、居座のまま姿勢を正すのみです。
相手により:
國軍總司令官 航進を停止、端船長のみ起立敬禮
将官   徐航、端船長のみ起立敬禮
團隊長  その部下に限り徐航、端船長のみ起立敬禮
上長官  常航、下士端船長ないし士官端船長のみ起立敬禮
士官   常航、下士端船長のみ起立敬禮(89-94)
(士官どうし、上長官どうし、将官どうし、は居座のまま敬禮(95))
   上官の乗る端船を追越したり、前を横切る事はできません。(ただし至急を要する場合は、事由を告げれば可)(96)
   端船の番兵は、上官に対し起立敬禮をします。(97)
   将校の乗る端艇が禮砲を受ける場合は、その初發で航進を停め、終發にて航進を再開します。(98)  
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【風紀衛兵の敬禮】(風紀衛兵とは營門の歩哨・衛兵司令・控衛兵を指します)
   「衛兵」が敬禮する時は、着剣執銃(兵科によりては帯刀のみ)して門外または衛舎前に横隊に整列します。(「控衛兵整列」の軍鼓が鳴らされ、衛兵控所の前に衛兵司令以下、控衛兵が整列し、軍鼓が止むと、衛兵司令が「捧げ銃」を號令し、喇叭が吹奏されます。)
敬禮すべきは:
國軍總司令官、軍旗、元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官、部隊(99)
これに加えて「風紀衛兵」が敬禮すべきは:
所属の軍司令官・師團長・旅團長・聯隊長・獨立隊長(100)
1 國軍總司令官、軍旗は營門を出入しなくとも、眼前にやってきた時には必ず敬禮する。
2 「下士以下の引率する部隊」及び「武装せざる部隊」には敬禮の必要なし。
3 「元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官」に對しては、武装せる部隊停止間の「将官同相當官に對する敬禮」を行い、その官職を認知できない時は敬禮しなくてもよい。(101, 104)
4 「聯隊長・獨立大隊長」(あるいは大佐以下が旅團長以上を代理する場合)に對し「風紀衛兵」は将官に對する時に準じ、武装せる部隊停止間の「将官同相當官に對する敬禮」を行う。(106)
5 部隊が營門を通過する時、喇叭は通過する部隊の方が鳴らすので、衛兵側は奏樂しません。また部隊は答禮しません。
6 部隊が覆を取除いた状態で「軍旗」を立てている場合は、衛兵は先ず武装せる部隊停止間の「部隊に對する敬禮」を行い(105)、軍旗が衛兵の前を通過するに臨んで更に軍旗に対し部隊停止間の「國軍總司令官に對する敬禮」を行う。ただし喇叭・軍鼓・笛は「國歌」に代えて「敬愛」を吹奏する。また軍旗迎送隊には「部隊に對する敬禮」を行わず、ただちに軍旗に對する敬禮を行う。(103)
7 兵科准士官以上が營門を通過する時は、歩哨の衛兵が敬禮し、衛兵控所に並んで座っている控衛兵が立上がって注目します。各部准士官相當官以上には、これがありません。(この場合の控衛兵起立は、禮式令では規程されておらず、慣習によるものです)
  
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【歩哨の敬禮】
歩哨の敬禮すべきは:(108)
  國軍總司令官
  軍旗
  将校兵科准士官
  帯勲者
  上等兵以上の指揮する部隊   正章を着用した帯勲者
  儀杖隊を附した軍人の柩

歩哨の「氣ヲ附ケ」「注目」をすべきは(敬禮は不要):   各部准士官相當官以上
  下士・上等兵
  略綬を着用した帯勲者

   歩哨が敬禮する時は、定位置に立ち受禮者約6歩手前に来る時に、捧銃(あるいは肩刀)にて注目の敬禮をし、6歩過ぎるまで、そのままの姿勢を保ちます。(109)
   ただし下士・上等兵と帯勲者に對しては、執銃(あるいは肩刀)の儘「氣ヲ附ケ」の姿勢をとり注目します。(112)(116)
   歩哨が兵卒から敬禮を受けた時は、執銃または肩刀のまま姿勢を正します。(注目は不要)(117)  
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【奏樂】
   營門における奏樂は先ず軍鼓が號令譜を奏し、次いで喇叭と軍鼓が禮式譜を奏します。軍鼓を缺く部隊は喇叭が號令譜を奏します。營門以外での禮式による奏樂は喇叭を主とし、必要に応じて軍鼓、笛が加わります。  
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【儀杖】

   國軍總司令官及将官(124)が軍隊駐屯地に到着し、またはそこを出發する時、當該軍隊は正装した儀杖隊を編成して途上を警備し、また儀杖衛兵を編成して宿泊所を守衛します。(119,120,121,128)

儀杖隊の派遣場所は;
波止場
停車場
市外約10丁の所(或は迎送式の隊列より遠い所)
のいづれかです。場所は衛戍司令官が決めます。(122)

儀杖兵を供する時:
國軍總司令官が軍隊駐屯地を訪問・通過する事があって、その到着・出發の時。 元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官が公務で軍隊駐屯地を訪問し、その到着・出發の時
軍隊の長たる将官(軍司令官、師團長、旅團長など)が初めて部下軍隊駐屯地に着任し、また轉職等のため離任する時(125)

   儀杖兵は乗馬獵兵ないし歩兵が望ましく、他兵科であっても徒歩編成(歩兵に準する隊形)とします。儀杖兵は晝夜どのような時でも出場します。(127)
   儀杖隊の敬禮は部隊の禮式をとります。儀杖衛兵は衛兵の禮式と同じです。普通の衛兵と事なり、儀杖を受ける人と同級以上の人ならびに軍旗に對する以外は、誰にも敬禮しなくて良い事になっています。ただし儀杖衛兵の歩哨は通常の禮式どおり敬禮します。普通の衛兵は夜間の敬禮は行はなくとも良いのですが、儀杖衛兵に限って夜間でも敬禮します。(129,130,134)

儀杖隊の編成:
國軍總司令官 軍旗を立て聯隊長が指揮する獵騎兵1中隊または歩兵1大隊
總理大臣 軍旗を立て中隊長の指揮する獵騎兵2小隊または大隊長の指揮する歩兵2中隊
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官 中隊長の指揮する獵騎兵1小隊または歩兵2小隊
陸軍中将 中尉の指揮する獵騎兵半小隊または歩兵1小隊
陸軍少将准将 少尉の指揮する獵騎兵半小隊または歩兵1小隊(132)

儀杖衛兵の編成:
國軍總司令官 軍旗を携え大隊長の指揮する歩兵1中隊(正門歩哨は複哨)
總理大臣 軍旗を携え中隊長の指揮する歩兵2小隊(正門歩哨は複哨)
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官 中尉の指揮する歩兵1小隊(正門歩哨は單哨)
陸軍中将 中尉の指揮する歩兵半小隊(正門歩哨は單哨)
陸軍少将准将 少尉の指揮する歩兵半小隊(正門歩哨は單哨)(133)  
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【迎送式】

   國軍總司令官および将官(136)が軍隊駐屯地に到着し、また出發する時、迎送のため軍隊は整列します。(135)    迎送式は夜間は行いません。(138)
   出場者の服装は、将校が通常禮装、下士以下は略装。(139)
整列部隊の兵數:
國軍總司令官 該地衛戍兵の全て(所要勤務兵を除く)
總理大臣 該地衛戍兵の半部
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官 該地衛戍兵の1/3
軍隊の長たる将官(准将を含む) 該地駐屯部下部隊の全て(所要勤務兵を除く)(140)
   整列の場所は、波止場・停車場・市街地の入口のいづれかと受禮者宿泊所の間とし、道路の一側または兩側に整列します。受禮者の来る方向を上とします。受禮者が列車などで通過する場合も同じです。(141)
   受禮者がその場に来る時は、整列部隊は部隊の敬禮を行います。(142)
   衛戍司令官は、國軍總司令官ないしその代理者の迎送に際して、波止場・停車場ないし市街地の入口に出迎え、宿泊所まで随從し、出發の時は同じく随從して波止場・停車場ないし市街地の入口まで送ります。(143)  
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【伺候式】

   國軍總司令官ないし将官(146)が軍隊駐屯地に到着後24時間以内に、また出發前24時間以内(148)に、宿泊所に将校が挨拶に伺います。(145)
   服装は迎送式と同じです。(146)
伺候者:
國軍總司令官ないし總理大臣に對しては 該地所在の将校以上
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官に對しては 該地所在の佐官以上
軍隊の長たる将官(准将を含む)に對しては 該地所在の所属将校以上(147)
   各階級の總代が伺候することで濟ませることも可能です。(147)    伺候は衛戍司令官の設けた時刻に同時に行います。對話陳述を控え、敬禮を行うのみです。(151)
   受禮者が拝謁・對謁の時間を取れなかった場合は、帳簿に官氏名を記するか、名刺を呈して、その禮意を通じます。(149)


【觀兵式】

   國軍總司令官誕生日と建軍記念日には、正装した團隊を集めて閲兵(閲兵式)と分列行進(分列式)をします。(152,153,155)
   どのように小さな衛戍地や分遣隊でも必ず分列式丈はします。(158)
   觀兵式の指揮を執るのは、その地の高級(先任)團隊長ですが、それが自ら觀閲をする場合は、次級の團隊長が指揮します。(156)
閲兵をするのは:(157) 國軍總司令官の時、 その地の全将校が出場(157))
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将の時、特命檢閲使たる将官
軍隊の長たる将官の時、軍司令官、師團長、旅團長など     
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【禮砲式】

   祝日において、または國軍總司令官・将官に對し敬禮のため野戰砲を發砲(空包にて)します、これを、禮砲式と云います。(106)
その數は:(162)
聯合共和國結成記念日、臨時祝日(凱旋式當日など) 101發(野戰砲兵隊を持つ全國すべての衛戍地が行う(165))
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官に對して 19發
軍司令官に對して 13發

その實行する時は:(163)
聯合共和國結成記念日(當日正午より行う(164))
國軍總司令官が野戰砲兵隊駐屯地を訪問ないし通過し、その到着・出發の時
元帥、陸軍大臣、参謀總長、檢閲總監、大總督、陸軍大将、特命檢閲使たる将官が、公務のため野戰砲兵隊駐屯地に赴き、その到着・出發の時
軍司令官が初めて部下野戰砲兵隊駐屯地に赴いた時、および轉職等にてその地を發する時。
その他、特に規程あるか、または特に命令ある時
(以上、晝間に限る)  
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【命課布達式】

   隊の将校に新しく命課が與えられた時には、其の将校の部下となる隊を營庭に整列させ、隊長がその旨を紹介します(例えば中隊長大尉乃至中隊附少尉ならば中隊全員、大隊長少佐ならば大隊全員、聯隊長大佐ならば聯隊全員)。兵科以外の将校相當官(各部士官(軍醫や主計等)及准士官(将校と同じ職務を行う准尉、少尉補)には布達式が無く、部隊長が適宜紹介します。また兵科将校であっても隊本部勤務者(副官、参謀、陣營掛等)の場合、戰闘状態にある時は布達式を行いません。
   布達される将校が部隊長であった時は、布達者は直属の上級司令官となります。旅團直轄部隊の時は旅團長(例えば野戰高射砲兵旅團獨立照明中隊)、師團直轄部隊の場合は師團長(例えば師團工兵大隊)、軍直轄部隊の場合は軍司令官(例えば軍野戰重砲兵旅團)が布達者です。部隊の衛戍地内に所属の上級司令部がない場合は衛戍司令官(衛戍地の最上級先任将校)、隊長自身が衛戍司令官の場合は、部隊の次席先任将校(聯隊ならば聯隊附中佐、大隊ならば先任中隊長)が布達者です。「因テ我等一同同官ニ服従シ」となります。蛇足乍ら旅團長以上の司令官を對象とする布達式はありません。旅團以上の司令部は部隊ではないからです。また聯隊區司令部、學校なども部隊ではなく官衙なので布達式はありません。

○順序

1 隊長以外の先任将校(聯隊の場合は聯隊附中佐、大隊の場合は大隊の先任中隊長、中隊の場合は中隊附中尉)が隊を指揮し着剣執銃(兵科により帯刀)にて整列する。
2 聯隊長自身が布達される将校である場合は、軍旗を立てる。
3 被布達将校は隊の中央前にて、隊列に面し肩刀をなし、布達者の左側に位置する。(布達者が下位の場合は、右側に位置する)
4 布達者は附属の喇叭手に「氣ヲ著ケ」の號音を吹奏させる。
5 指揮将校は隊に「注目」を命ずる。
6 布達者は附属の鼓手に「布告」の號音を打たせる。
7 布達者は、例えば「國軍總司令官の命に依りいい、陸軍歩兵大尉准男爵何某今般歩兵第1聯隊第1中隊長に補せらあある。因て同官に服從し各々軍紀を守り職務に勉励し其の命令を遵奉すべええし!」と唱える。
(布達者が下位の場合は、「何某」に敬称を附し(普通は「殿」、准将以上は「閣下」)、「因て同官に服從し」のところを「因てわれら一同同官に服從し」と唱える。
8 布達者は隊に「直レ」を命令する。
9 隊の指揮将校は「捧銃(ささげつつ)」(帯刀部隊にあっては「捧刀(ささげとう)」)を命令する。指揮将校は刀禮する。
10 整列部隊は被布達将校に注目し、隊喇叭手、鼓手、笛手が「國歌」を吹奏する。
11 布達者と被布達将校は、互いに向き合って刀禮を交わす。
12 被布達将校が聯隊長・大隊長・中隊長の場合は、その部下隊が新隊長に対し徒歩分列式を行う。(但し乗馬隊は乗馬分列式、車輛を伴う特科隊は徒歩となり歩兵隊形をとる (rem))
13 第1期檢閲未了の兵卒及列外者は、本隊の後方に整列し、分列式には加わらない。
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【離任式】
   聯隊長、大隊長、中隊長が他に轉ずる時は、その部下たりし部下隊に告別の辞を述べます。部下隊はこれに對し分列式を行います。

○順序
1 部下隊の上級先任の将校が指揮して、着剣執銃(兵科により帯刀)にて整列する。
2 離任者は隊中央前にて隊列に面し、
3 隊は「氣ヲ著ケ」の喇叭にて威儀を正し、次いで「注目」の號令にて離任者に注目する。
4 離任者は短く告別の辞を述べる。
5 隊の喇叭手・鼓手・笛手が「惜しみて餘りある」の譜を吹奏する。
6 隊は離任者に對し分列式を行う。
7 第1期檢閲未了の兵卒及列外者は、本隊の後方に整列し、分列式には加わらない。  → top


【會葬式】
   在隊軍人と功3級以上の帯勲者(入獄中の者を除く)が死亡した時は、直属團隊長あるいは現地衛戍司令官が葬儀を執り行います。死者が准士官以上の時は、現地衛戍司令官が葬儀委員を設け下士卒を附属して装儀の運營を行います。

○柩
1 柩は黒布で覆い、勲章記章褒賞をその上に排置する。
2 准士官以上は、さらに本人生前使用の正装(正衣袴・肩章・帽・飾緒・帯刀(劍)・刀緒)を排置する。
3 葬送途上の柩は砲車に載せる。
4 乗馬本分者は、乗馬を柩の後ろに(馬卒をもって)牽かせ、その馬具をすべて黒布で覆う。

○儀杖兵發差
1 准士官以上、功3級以上の勲章所持者、従軍中の下士卒、従軍記章を有する下士卒には、正装の儀杖兵(徒歩編成・喇叭手鼓手附属)を派遣する。
2 儀杖兵は喪家の門前より葬祭場までの途上、柩の前後に列し護衛をなす。 3 團隊長たる大尉以上の葬送には、部下軍隊すべて正装し徒歩編成にて葬送途上の道の両側に堵列し見送る。堵列する軍隊の指揮は、死者次級の者がとる。軍旗ある隊は、儀杖兵中に旗手・軍旗衛兵を派遣し、これをたてる。
  隊列の位次は、柩の来る方を上とする。
  堵列場所は、葬儀管理者たる衛戍司令官又は團隊長が決定する。
4 儀杖兵は儀杖服務中、柩に對する外は、すべて敬禮を行わない。
5 葬送距離が半日行程(約12km)以上の場合は、儀杖兵を派遣しない。
6 儀杖兵のない(軍隊が駐屯しない)地方では、儀杖を派遣しない。
7 該當衛戍地にて規程數の儀杖兵が充足できない時は、兵員を減ずる。

○儀杖兵の兵員・編成
1 元帥: 歩兵1聯隊(聯隊長指揮)
2 大中将・功1級叙勲者: 歩兵2大隊(大佐または中佐指揮)
3 中将相當官・少将・功2級叙勲者: 歩兵1大隊(佐官指揮)
4 少将相當官・大中佐・功3級叙勲者: 歩兵2中隊(少佐指揮)
5 大中佐相當官・少佐: 歩兵1中隊(大尉指揮)
6 少佐相當官・大尉: 歩兵2小隊(中尉指揮)
7 大尉相當官・中少尉・同相當官: 歩兵1小隊(少尉または准尉指揮)
8 准士官: 軍曹1・伍長1・上等兵2・兵卒20(曹長または軍曹指揮)
9 曹長: 伍長1・上等兵2・兵卒16(軍曹指揮)
10 軍曹: 上等兵2・兵卒12(伍長指揮)
10 伍長: 兵卒10(上等兵指揮)
11 上等兵: 兵卒6(古参卒指揮)
12 一二等卒・雑卒: 兵卒4(古参卒指揮)
(海軍より要請ある時は、上記に該當する編制區分に従って派遣する)

○儀杖の順序
1 儀杖兵は喪家の門外に整列する。
2 柩の出る時は、その死者官階相當の敬禮をなし、喇叭手は低濁の音調をもって「命ヲ捨テテ」を吹奏する。
3 隊を二分して柩の前後に備え、側面縦隊にて行進し、兵は銃を逆にして臂下に執る。行進間、喇叭手は鼓手の伴奏のもとに「惜ミテ餘リ有」を吹奏する。
4 堵列する軍隊は、柩の通過する時、その死者の官階相當の敬禮をなす。
  柩の通過後、指揮官は鼓手に「解散」の號音を命じ、これをもって各隊は解散する。
5 葬祭場に到着すれば横隊をなし、葬祭の間「立銃」のままとする。
6 葬祭の告詞が終れば敬禮し、鼓手が「埋葬」の號音を發した後、喇叭手は低濁の音調をもって「就寝」を吹奏する。
7 尉官以上の死者には、弔銃齊發をなす。
  その回數は: 尉官1回、佐官2回、将官3回
8 敬禮を終って直ちに退場する。

○總代會葬
陸軍會葬の禮遇を行わない場合は、その一般葬送時に同官等以下の者を總代として會同(参列)せしめる。
總代人員:
   将官・同相當官: 同官等者1、上長官1、士官1
   上長官・士官: 同官等者1、士官1
   准士官: 同官等者1、准士官2、下士3
     下士: 同官等者1、下士3、兵卒4
   兵卒: 同等級者1、兵卒3
總代は正装して、柩の左右に随行し、葬祭場においては親族の次に列する。

○表喪式
1 會葬式派遣の軍隊は、軍旗・喇叭・軍鼓に喪章を附し、准士官以上および見習士官は刀(劍)に喪章を附す。
2 聯隊長・大隊長・中隊長の喪には、その部下将校・同相當官は一箇月間、刀(劍)に喪章を附す。
  軍旗ある隊は、後任者拝命まで旗に喪章を附す。
3 将校・同相當官・准士官は親族の喪に居る時は、服喪期間中、衣の左袖に喪章を附す。

軍旗の喪章: 幅2寸長4尺の黒布を旗竿の上端に附す。
喇叭の喪章: 幅2寸長2尺の黒布を前身と後身に附す。
軍鼓の喪章: 黒布をもって全体を覆う。
刀(劍)の喪章: 幅2寸長2尺の黒布を柄に附す。
衣の喪章: 幅2寸の黒布を左腕に巻く。  → top


【墓地】tomb,
(準備中)   → top
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