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治罪制度

→刑事法
→治安判事即決法廷
→區裁判所檢事局
→區裁判所輕罪法廷
→収監
→保釈
→地方裁判所豫審廷
→地方裁判所重罪法廷
→控訴院覆審廷
→大審院覆審廷
→刑罰
→監獄
→囚人生活
→死刑の種類
→恩赦
【刑事法】 →top
  聯合共和國に於いてしてはならない行為を「罪」(krim)と云います。そしてこれをする事を「犯罪」(krimad)と云います。何を罪とするかは法律(legh)及び命令(ord)に規定してあります。犯罪は國によって罰せられます。「刑法」(kod de kriminal)には犯罪行為とこれを罰する「刑」(pun)が決められてありますが、これが全てではなく、他の法律及び命令にも刑法に規定された以外の犯罪行為とこれらをどう罰するかが決められています。刑罰をどう行うかは「刑獄令」(ord de pun)に決めてあります。
犯罪を罰するには必ず裁判を經なければなりません。犯罪を疑われた者は「犯罪被疑者」(suspektit)として扱われ、裁判(jugh)にかけられると「被告人」(akuzit)となります。裁判で犯罪の事実が證明され判決(kondamn)を受けると「罪人」(krimul)として刑の執行(ekzekut de pun)を受けます。その判決に不服がある場合は不服申立ができます。こうした裁判の手續を決めてある法律が「治罪法」(kod de proces kriminal, 舊稱 kod de instru kriminal)です。刑事訴訟の取決を詳しく定めてあり、裁判は全てここに記された条文に則って實行されます。


【治安判事の即決法廷】 →top
  犯罪が起きた時には先ず巡査(polican)を呼んできます。犯人を捕まえてくれるよう頼むと、巡査の眼前に現行犯人(krimul trovit che l'fresh far)や犯罪の容疑ある者(suspekitit)が居る時は、これを最寄の駐在所・巡査派出所・警察分署・警察署に連行して事情を聴取した後に、區町村の治安判事が開く即決法廷に出頭を求めます。逮捕は治安判事が發行する逮捕令状(arestleter)が無いとできませんが、現行犯、逃走・證拠隠滅の惧れある者、警察の命令指示に從わない者、自殺自傷の惧れある者、放置しておくと安寧秩序を亂す者、無宿者(住所不定)は令状なしで身體を拘束し留置場(malliberey)に監禁できます。これは「檢挙」と云い逮捕とは違いますが、實際は同じようなものです。これを逆に云えば30圓未満の罰金・科料に相當する事件の場合は、身元・住所が判然としており、逃走の虞れがなく警察の命令・指示に大人しく從う場合は連行・監禁される事はありません。その場で事情を聴取され直ちに作成された出頭命令書を渡されます。
  監禁された場合は、その期間は24時間以内と決っており、警察が請求すれば更に24時間の延長が可能です。治安判事は區町村一等巡査駐在所・派出所・警察分署・警察署の一室で即決法廷を開いており(昔は自宅で行った)、法廷に被害者(viktim)・告訴者(akzul)・巡査・容疑者を出頭させてそれぞれの訴えを聴き、すぐに處分方を決めてしまいます。情状酌量(per konsiderant de cirkonstanc)で放免(forliberig)となることもありますが、大抵は「違警罪即決例」(kutim de pun malobe)による罰金(pun mon)になる件が殆どです。無一文で罰金が拂えない時は、保釈金代理人(agent kawci)(大抵は土地の質屋が兼ねるが、大きい町では専門の業者がいる)が擔保を取って代りに拂ってくれます。擔保は品物から土地建物、年金證書など、何でもありですが、借りたお金の返濟方まで斡旋します。例えば無一文の浮浪者が浮浪罪(krim de vagabondad)で捕まると、代理人が肩代わりした罰金に利子をつけた額だけの借金を附けて、どこかに身賈りされます。とんでもない邊境の飯場で奴隷勞働をしなければならず、働きが悪ければ知らないうちに借金が増えてしまう事もあります。それが嫌ならば、監獄の勞役場(laborey pun)で罰金の代わりに重勞働に服さなければなりません。衣食住の實費を差引いた日當を貰い、それで罰金を拂います。徒刑と同じ扱いで囚衣も着るし御飯も粗末です。規律厳しく、一寸でも怠けたり獄則を守らないと懲罰にかけられるため、飯場で酒盛や賭博をする暮らしの方がまだましです。
 


【區裁判所檢事局】 →top
  違警罪で濟まず、それ以上の輕罪(7年未満の自由刑・30圓以上の科料相當 delikt)・重罪(7年以上の自由刑相當 krim grav)の疑いある件は、其の日の内に治安判事から町の區裁判所檢事局に犯罪の發生を通報する告發状(被害者が訴え出る時 akuzleter)・告訴状(第三者が訴え出る時 plendleter)を廻し(送檢)、事件は檢事の手に移ります。
  被害者の告發取下げ(被害の賠償を示談で濟ませてしまうなど)、證拠不十分、情状酌量(改悛著しい初犯者など)の餘地を認めた時には、檢事は事件を起訴猶餘や不起訴處分とし終りにしてしまいます。縣によっては不起訴となった事件を被害者が不服とした時これを救濟する為に、大陪審法廷を開き陪審員による評決で起訴を檢事に命ずる制度があります。特に舊北方帝國の西部諸縣ではこれが盛んです。違警罪が相當である時は、治安判事に事件を差戻します。
  しかし本格的な刑法犯罪の場合(輕罪以上に相當)は、公訴しなければなりません。檢事が逮捕令状を警察ないしそれに代わる警察機關に交付して被疑者の身體を拘束し、逃げないように警察署内の留置場に監禁して取調べます。證拠物件は裁判所に保管します。監禁は10日以内と決っており、區裁判所檢事正が請求すれば更に10日間の延長が可能です。檢事はこの最大限20日以内に調書を作って起訴あるいは豫審請求をしなければなりません。この間は被疑者への面會が許されませんが、差入は出来ます。三度の食事と点呼以外は寝ても起きても勝手ですし、服も自分のものを着ていて構いません。留置場の外に出る時は、暴れないように腰に巻いた縄または鐵鎖に両手を聨結します。身分ある被疑者は鄭重に扱ってもらえますが、犯罪常習者や博徒など裏社會の者には徹夜、飯抜、拷問の連續で取調べるのが常識になっています。


【區裁判所輕罪法廷】
  輕罪のうち簡易なもの(大抵は2年以下の自由刑相當)は、區裁判所檢事正の起訴に依り區裁判所輕罪法廷に於いて直ちに審理が進み、檢事・代瓣人の對審を經て裁判長が判決を下します。判決に不服な場合は、檢事も被告も控訴院に控訴ができます。控訴院の判決に不服の場合は更に大審院に上告できます。控訴と上告を纏めて上訴と云います。迅速な處理が得られる半面、ともすれば警察と檢察の取調が過酷かつ一方的で冤罪の犠牲となる場合があります。また邊境や外地では、警察や憲兵が檢事・執達吏の代理をし、それもいない時は保安官ないし警吏がその役目を果たします。區裁判所から非常に離れた地域では、治安判事が豫審判事の代理をすることもあります。このような邊鄙な場所では、犯罪被疑者は十分に法の保護を受けられないこともしばしばです。
  重度の輕罪(3年以上の自由刑相當)及び重罪(7年以上の自由刑相當)は區裁判所の檢事正が地方裁判所長に豫審請求をします。


【召喚・勾留・収監】 →top
  區裁判所檢事正より豫審請求を受けた地方裁判所豫審判事は被疑者を尋問する為にその出頭を求める召喚状を送達します。召喚状の受領から出頭までには24時間以上の間を置き、被疑者が出頭した時點からすぐに尋問に入り、それは48時間を限度とします。
  豫審判事は召喚した被疑者に勾引状を發行して警察力で出頭させる事ができます。これは次の場合に限られています。召喚された者が、1召喚に應じない、2定まった住所を持たない、3監獄にある、4逃亡する虞れがある、5證拠隠滅の虞れがある、6輕罪または脅迫を為す虞れがある。被疑者を警察の留置場に監禁します。
  豫審判事は勾引から48時間たち、なお被疑者の身柄を拘束する必要があると判断した場合は、被疑者に勾留状を發行して、未決監獄に30日間監禁します。この勾留は檢事正の請求により更に30日間延長できます。
  この勾留期限がすぎてもまだ尋問が必要な場合、豫審判事は被疑者に収監状を發行します。被疑者は裁判所に出頭して判事から収監理由を申渡され、既に勾留中ではない者は直ちに未決監に監禁されます。収監期間は裁判所が決め、輕罪容疑は1年、重罪容疑は2年が限度です。外地での犯罪は捜査に時間がかかるので2倍の収監期間となります。申渡には代瓣人と檢事が立會い、不服があればその場で申出ます。判事が直ちに判断して妥當な勾留期間に變更します。勾留途中で變更の必要が起きた時も判事に申出れば同様になります。
  未決監は各州縣に設けられている監獄の中にあり、囚人と同様の暮しをしなければなりません。番號で呼ばれ、囚人服と同じもの(但し色は浅葱)を着て、同じ食事を施され、獄則に從わないと懲罰を受けます。また暴れたり反抗したり逃亡しようとしたりすると再びさう云ふ事が起きないやう防止の為、手足首に枷を付けてそれらを太い鐵鎖で聯結した儘暮らさなければなりません。けれど差入が許されるので、好きな食物や本や衣類を取寄せて使えます。面會、豫審尋問、犯罪現場檢證、出廷など為に獄房から外に出る時は、暴れたり逃亡するのを防ぐ為に戒具で厳重に拘束されます。その方法は地方によって異っています。豫審判事は必要と判断した時には、被疑者を獨房に監禁できます。この場合は10日間が限度とされますが、豫審判事は10日目ごとに裁判所長に延長を申請できます。被疑者は10日の間に2度以上は豫審判事による尋問を受けなければなりません。


【保釈】 →top
  保釈金を納めれば自宅で普通に暮せます。しかし遠くに旅行はできませんし、裁判所の執達吏が毎日のように監視に現れます。裁判所に出頭する時には、武装した執達吏とその助手が送迎します。保釈中であるにもかかはらず逃走してしまった被疑者は、警察ではなく専門の執達吏が追及して逮捕・拘引し、裁判所は再びの逃亡を防ぐため監獄に収監してしまいます。賞金が出るので、別に「懸賞金稼ぎ」と云われる民間人もこの追跡に加わります。執達吏は證人の保護や證拠保全にも任じます。保釈金は大金になるので、大抵の被疑者は専門の保釈金代理人(貸金業者)から借ります。擔保にする資産のない貧乏人は、そのまま拘置されます。保釈がきかないケースは、被疑者において、その身を守る必要がある時、證拠隠滅の虞ある時、證人威迫や偽證工作の虞ある時、他の被疑者と謀議する虞ある時、再犯の虞ある時、安寧秩序・静謐を亂す虞ある時、前科ある時、逃亡の虞ある時です。このため重罪に該当する被疑者は大抵は保釈が利きません。勾留・収監中は面會も差入も出来ます。
  被疑者は瓣護人を指名し、裁判所に出る時は付添をしてもらえます。貧乏で代瓣人(瓣護士)を雇えない時は、裁判所が瓣護士を無料で差向けてくれます。
  軍人が豫審の對象となった時は、豫審判事は所属部隊・官衙の長官に令状を提示し、長官はその令状の執行を許可します。


【地方裁判所豫審廷】 →top
  豫審は、重罪相當の事件が起きた時、あるいは輕罪でも檢事正が必要と判断した時(大抵3年以上の自由刑相當)に、地方裁判所長が檢事正の請求を受けて開始します。捜査指揮と被疑者の身柄は檢事から豫審判事の手に移ります。檢事の請求に應じ豫審判事は速やかに事件現場に驅けつけ、司法警察を指揮して證拠を保全し捜査を始めます。例えば殺人事件の現場には警察官、區裁判所檢事、地方裁判所豫審判事が集合し、豫審判事が捜査の指揮を執る事になります。豫審判事は裁判所書記の立會のもとに被疑者・告訴者(被害者)・告發者(第三者)・證人・参考人・檢事・警察官など關係者を召喚・尋問し、現場を臨檢し、證拠物件を差押え、集めた證拠を保管・鑑定します。それらは被疑者にとって不利・有利を問いません。こうして事實關係を明らかにして犯罪の眞相を立證します。この間、代瓣人は豫審調書を閲覧でき、被疑者の潔白を證明する為に豫審判事に瓣護側の證拠や證人の召還、事件現場の再檢證を請求できます。豫審判事は原告・被告双方の證拠・證言が出揃うと、事件を地方裁判所豫審部に送ります。そこでは上級の豫審判事3名(1名は豫審部長)が合議して豫審調書をもとに豫審判事が特定した被疑者を裁判にかけるかどうかを決めます。秘密主義・書面主義で、檢事と代瓣人が別々に出頭して意見を陳べます。物的證拠が得られず、状況證拠しかなく、しかも被疑者が自白しない場合は、免訴(證拠不十分で裁判にならないので被疑者を放免)となることが多く、豫審部は公正中立な立場で決定を下します。

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【控訴院覆審廷】
  地方裁判所の判決に不服な場合は上訴ができます。十分な豫審を經てきているので、上級裁判所たる控訴院では専ら違法な捜査が行われなかったか、冤罪ではないのか、と云ふ點を審理します。


【刑罰】
聯合共和國刑法で定められているもの(括弧内は附加刑)
   重罪に對する刑
      極刑 死刑(名誉剥奪:位階勲等爵位を剥奪)
      重刑 流刑(名誉剥奪、追放:流刑終了後警察監視下で流刑地定住)
         重徒刑(監視:徒刑終了後警察に定期出頭)
         重禁獄刑(同上)
   輕罪に對する刑
      輕刑 輕徒刑
         輕禁獄刑
         罰金刑
         科料
地方条例で定められているもの
      過料


【監獄】
  刑が確定すると、自由刑・身體刑を受ける者は既決囚として監獄に監禁してしまい、財産刑・名誉刑は監獄には入れず住む處を指定して刑の完了するまで執達吏の監視下に置きます。それまでの収監および留置期間は規定の換算率で刑期ないし罰金・過料から差引かれます。刑の執行途中で無罪と判り判決を取消されると、受けなくともよい刑罰を受けた事に對する補償金を請求できます。
  死刑は地方の慣習に從い其々執行方法が異っています。執行後、冤罪であると判明した例が多いので、最近では死刑廢止の論議が盛んとなっています。
  死刑の次に重い流刑は、氣候の悪い邊境の監獄に監禁し、苦役に服します。出獄後も流刑地に定住しなければなりません。聨合共和國のちょうど真中にある緯度から北を管轄する裁判所で判決を受けた囚人は南洋の酷暑流刑地に、南はベツルシア島嶼自治州の極寒流刑地に送ります。

南洋の流刑場、気候の悪い絶海の孤島にある

寒地の流刑場

差入の支給、夕食

  徒刑囚は徒刑場に監禁となって苦役に服します。禁獄囚は監房監禁のみで苦役を伴いませんが、希望すれば勞役場での勞働や監房内での手内職が出来ます。罰金・科料は、拂えないと金額を換算した日數分だけ監房監禁となります。希望すれば勞役場に監禁となって勞働に服し、そこで得た勞賃で罰金・科料を拂います。
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【囚人生活】  凡そ囚人となると公権停止となり、國民たる名誉も權利義務も取上げられて、典獄の監視下に入ります。監獄は懲罰主義で、悪いことをした人間を懲らしめて二度と罪を犯す氣にならないよう「懲り懲り」させるためにあるので、囚人は大變に手厳しい扱いを受けます。
  監房は厳重な石造で、通路側の壁が無く、一面に太い鐵格子が嵌っていて、中が丸見えです。食べるものは最初は水と麺麭と塩だけで、品行によって段々良くなります。雑居が原則ですが刑が重くなるほど小人数の監房となり、終身刑や死刑囚は独居房となります。男子、女子、未成年は互いに獄舎が分離されており、同じ獄舎でもひとつの監房には成るべく同年齢層を入れるようにしてあります。
  着るものも最初は裸同然の囚衣です。これも品行によって段々ましになります。囚衣は刑種によって色が決まっており、未決は浅黄(使古しは灰色に見える)、流刑は萌黄(使古しは黄緑色に見える)、徒刑は赤(使古しは柿色に見える)、禁獄刑は紺(使古しは水色に見える)、死刑は黒。監房の外に出る時は逃走・暴挙防止のため枷・鎖・錘・捕縄・轡などの戒具附になり、獄則違背は屏禁・減食・戒具加重・降等などの懲罰が課せられます。
  囚人には囚等級があって、品行により進級し、上級囚は看守の助手として雑役に服します。その成績が良いと、模範囚となり假釈放となります。品行が悪く看守に反抗ばかりしていると、最下等になってしまいます。等級により衣服・食事に差があります。入獄したては4等囚で、品行がよいと3ヶ月毎に1級上っていき、一年目の前日に4等囚1級になっていると、翌日から3等囚になります。以下同じく2等囚、1等囚と進級していき、1等囚になると模範囚として監房外で看守の助手を勤め、さまざまな役職(炊事、掃除、洗濯など)に就きます。1年間1等囚1級を勤めると、假釈放となります。
  逆に反抗したり獄則を守らず一向反省しない囚人は、だんだん降等されて最後には5等囚になってしまいます。重罪を犯して入獄した囚人も4等囚ではなく、見せしめのために5等囚から出發します。5等囚は待遇も悪く、痒いところを掻くのにも看守の許可が要ると云ふ規則ずくめのロボットのような生活を強いられますので、たいてい音を上げて早く4等囚に這い上がろうと大人しくなってしまいます。中には4等囚になった途端にまた暴れだして5等囚に降等され、これを就中繰返している豪の者もいます。
  看守はもともと裁判所の執達吏助手であり、特に監獄勤務に特化した職種で、警察や憲兵とは違います。常に笞や警棒を携帯していて、獄則に違背しようとする囚人を警告のために打擲します。また野外の徒刑場では反抗や逃走を防止するため、剣や小火器を携帯し、監視塔には威嚇のため機關銃が据付けられてゐます。監獄には常備の武装警備隊が編成されており、集團反抗や逃亡に備えています。
  刑罰制度も中々お金がかかります。

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【死刑の種類】
地方によって異なっています。それぞれ昔から行ってきた方法に依ります。

舊北帝國 断頭刑
舊北帝國の北西諸縣 絞首刑
舊レミニア共和國及び陸軍 銃殺刑
海軍 絞首刑

断頭刑の例(於舊北帝國諸縣)

絞首刑の例(於舊北帝國西北部諸縣)


【恩赦】
  國家の慶事弔事があった時は恩赦令(勅令)による大赦、特赦、減刑、刑執行免除、復權が行われます。恩赦は國家元首が決めるのですが、どういう時に勅令を發するかは、今までの慣例により決まっており、司法省が原案を作り總理大臣が上奏します。國家元首が交代した時、戰争が終った時、議會・樞密院・國務院が申請した時、司法大臣が個別の囚人を對象にして申請した時があります。聨合共和國の恩赦は罪刑を規定する法律法令が変更された時や冤罪事件の救濟時に刑を見直す以外は、特定の囚人を對象とする事は殆どなく、恣意私情取引等の入込む餘地の極めて少ない硬直した運用となっています。囚人一律に刑が一等減じられ、死刑囚が無期流刑囚になったり、無期流刑囚が有期流刑囚になったりします。最近の例では、1930年のレミニア共和國と北帝國の停戰を記念する恩赦が行われ、その直後に新しく樹立された聨合共和國の元首が就任した時にも再び恩赦が行われました。この二度の連續した恩赦により囚人はたいへん大きな恩恵を受け、全ての死刑囚は流刑に変更となり、其他の囚人は本来の刑期より早く出獄しました。
内地年間刑事統計

在監受刑者數男子(罪名別)
窃盗21,103 詐欺恐喝3,664 強盗2,759 殺人2,293 放火1,460 傷害1,431 横領1,131 偽造650 賭博富籤474 猥褻姦淫重婚470 住居侵害261 贓物206 略取誘拐117 公務執行妨害36 騒擾25 偽證誣告17 瀆職14 嬰兒殺8 堕胎3 其他刑法犯139 陸海軍刑法違反38 森林法違反23 兵役法違反3 違警罪231 其他法令違反303

在監受刑者數女子(罪名別)
窃盗231 放火164 殺人89 詐欺恐喝56 嬰兒殺13 傷害11 偽造10 強盗7 堕胎7 賭博富籤7 横領4 猥褻姦淫重婚3 公務執行妨害1 其他刑法犯3 違警罪23 其他法令違反5

第一審刑法犯被告原因別
男子
利欲14,193 習癖6,197 出来心3,550 憤怒2,734 懶惰795 貧困637 射倖609 遊蕩572 浮浪411 疎虞352 怨恨282 痴情161 酒興131 友誼101 復讐80 政治上ノ關係80 嫉妬67 悪戯66 誘惑45 無監督41 家内不和36 虚榮31 刑餘ノ不信用31 食欲30 不時ノ遭難24 疾苦21 迷言18 驕奢15 家庭不良10 娯樂10 親族利益上ノ争3 狂疾1 其他164 不詳4
女子
利欲265 出来心249 習癖105 憤怒42 貧困51不良交友34  怨恨28 射倖22 痴情20 疎虞13 嫉妬10 虚榮9 懶惰8 家内不和7 疾苦7 家庭不良6 友誼6 悪戯3 親族利益上ノ争3 浮浪2 政治上ノ關係2 誘惑2 遊蕩1 酒興1 復讐1 無監督1 食欲1 其他11 不詳4

被殺害者原因
盗賊47 怨恨126 争論上又ハ一時ノ怒366 賭博上ノ争10 利欲65 捕ヲ拒ミ又ハ暴行7 瘋癲人60 暴行人又ハ酔狂人52 貧困98 痴情又ハ嫉妬200 正當防衛5 人違7 其他244 不詳62


  
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