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階級等級の起源を解説します。

凡例: 階級等級名には原語表記を付す。次に英語訳(なるべく原語の意味を伝える語)を加えた。

【兵士】soldat, soldier
軍人全般を示します。大昔は貨幣が行き渡っていなかったので、兵隊の給料は金銭ではなく、貴重品であった塩(solt)で払っていました。それで兵隊のことを塩(sold)の人と、そう呼ぶようになりました。
【兵卒】privat, private
昔は領主が勝手に武装して軍隊を組織し、城館・領地の警備や戦争をしました。国王の力が弱く、常備軍が無かったので、自分の領地は自分で守る必要がありました。兵隊は必要のある都度、領主が自分の財布から、お金を出して雇いました。「私的(private)に雇った兵隊」という意味から、PRIVATE と兵卒の事を呼びました。それが、そのまま現在の兵卒(private)の呼び名になっています。

【二等卒・一等卒】privat 3a klas; privat 2a klas, private 3d class; private 2d class
通常、二等卒は未訓練兵(新兵)、一等卒は訓練済みの兵卒を意味していますが、これは便宜的なもので、必ずしも2等級に区分しなくともよいのです。例えば海軍の水兵は5等級に区分されています。軍隊によって等級の設け方は違います。単に「兵卒」として一つの等級しか設けていない外国軍隊もあります。(この場合の新兵には、識別のため未訓練である事を表わす徽章を付けさせる事が多い)
ただし、「未訓練・訓練済」「在隊期間の長短」での貢献度の差を給料や等級に反映させたい場合は、兵卒を適宜の等級に分ければ良いのです。従って、軍隊によっては、三等卒や四等卒がいても別段おかしくはない訳です。

【上等兵】privat 1a klas, private 1st class
優秀な兵卒を「序列上位(FIRST CLASS)の兵卒」と呼び、「V」字型(VERY GOOD の「V」)の等級章を附けさせて、指揮官が識別出来るようにしておき、必要に応じて他の兵卒を指揮させます。

【伍長勤務上等兵】lanc kaporal, lance corporal
下士官が不足した時は、上等兵のうちから適任者を選んで下士官の代理をさせます。昔の軍曹は、隊列を整頓するために長い矛槍(LANCE)を持っていました。それで、LANCE(槍)は、この槍を持って上級職位の代理をする、と云う意味になりました。
「○○勤務」といえば、必ず頭に「LNACE」の呼称が附きます。伍長勤務に限らず、「特務曹長勤務軍曹」(LANCE SERGEANT MAJOR)と云ったりします。

【伍長】kaporal, corporal
数名の兵卒には、おのずと軍隊経験の長い「頭(KAPO)」がいて、それが日常生活や戦場で兵卒の纏め役になります。この「KAPO」が「KAPORAL(伍長)」の語源です。
しかし一説によると、胴体のことをラテン語では「corpo」と云い、小規模な兵隊の団体を率いる者をイタリアでは「corporale」と呼び、それが伍長「corporal」になったとも云います。 「伍」は、「列伍(RANK & FILE)」の「伍(FILE)」で、二人から数名程度の人数を云います。その長が「伍長」です。上等兵が指揮する「伍」もあり、その場合の上等兵は伍長勤務(LANCE CORPORAL)と称します。数伍をまとめて分隊を編成します。

【軍曹】serghent, sergeant
昔、騎士の従者・召使(SERVANT)に、付属の兵卒どもを指揮させたのが、「軍曹(SERGEANT)」の語源です。従者「serventes」が兵隊訛りで「sergentes」になり、そのうち「sergeant」となりました。外国軍隊には、この「従者=召使」と云う意味を嫌って、敢えて「軍曹」を「伍長(CORPORAL)=頭目」と呼び換えている軍隊もあります。

【曹長】1a serghent, first sergeant
中隊の最も先任(序列が最上位)の下士官を、「1番目の軍曹(曹長) first sergeant」と呼びます。
中隊の庶務を一手に引受けて、金銭出納・下士官兵の人事・兵器・被服・陣営具などの物品管理を行い、戦闘においては指揮班長として中隊長を補佐し、功績を記録します。また中隊付将校が欠となった場合は、小隊長として戦闘を指揮します。
現在では、下士官兵の人事を中隊付特務曹長(company sergeant major)が担当するので、曹長は「給養掛」(部隊によっては「経理掛」「庶務掛」と呼ぶ。どう呼ぶかは部隊が決める)として、人事以外の事務を取扱います。

【特務曹長】serghent mayor, sergeant major
「MAJOR」は「親分」の意味ですから、「SERGEANT MAJOR」は「軍曹の親分」「親分たる軍曹」となります。下士卒の最先任者として睨みを利かします。将校と下士卒との橋渡し役です。
英米系の軍隊は、聯隊付特務曹長(Regimental Sergeant Major) を設けて、部隊の下士官兵の人事を担当させ、また英軍の行進では部隊長に代わって号令をかけさせます。(旧日本軍では、曹長のうち先任者をフランス式に「下副官」と呼んで准士官とし、やがて「特務曹長」と改称しました。)

【准尉】4a lewtenant, warrant officer
「Warrant」は、「准士官に任ずる辞令」の意味で、将校の「待遇」を受けていますが、本来の身分は下士官です。所属部隊長が准士官・下士官の人事を決めます。陸軍省は専ら正規の将校の人事のみを扱うので、このあたりで身分の差をつけられています。古手の下士官を将校として優遇する場合は、これになります。
【少尉補】 3a lewtenant, reserved warrant officer
一年志願兵出身の豫備役で将校勤務の見習士官(kadet)課程を修了した者が応召した時に、ここにいれます。

【中少尉】 Lewtenant, lieutenant
昔は中隊旗を持つ役目の士官を「LIEU(旗)TEN(持ち)ANT(役)」と呼びました。それが中隊付将校の職名となり、やがて階級名に採用されました。席次の上位者から順に第一、第二と呼んでいくので、第一のLIEUTENANTは中尉(FIRST LIEUTENANT もしくは単に LIEUTENANT)、第二のLIEUTENANTは少尉(SECOND LIEUTENANT)となりました。

【大尉】 kapitan, Captain
昔は中隊の頭目(CAP)という意味で、中隊長をCAPTAINと呼んでおり、それが大尉の階級名となりました。ドイツ語でも大尉はHAUPTMAN(Haupt=頭)です。30年戦争ころまで中隊は、頭目たる大尉に率いられた傭兵の集まりで、傭兵の大親分(将軍)の呼びかけに応じて、相応の金品と引換えに参集しました。それで形勢が不利となれば、戦線離脱はもちろん、寝返りや、敵同士の中隊が一時停戦協定を勝手に結ぶなど、今の常識では考えられないような行動をとっておりました。絶対君主の常備軍が整備されるまでは、まさに野武士の集団でした。
大尉は自分の責任で、中隊員の兵器・被服・糧秣・陣営具を用意しなければならず、より有利な条件を出す雇主を捜して、そちらにつくのです。また行軍中は雇主の野戦倉庫から補給を受けますが、行く先々の村落や町を略奪するのは当然の権利とされていました。中隊は自前で生活しなければならないので、平時は節約のために下級の兵卒は解雇し将校下士官の幹部だけしかいませんでしたが、戦争になると兵隊を雇入れました。その給料も待遇も中隊長の大尉が決めました。酒保(移動売店)の馬車やら商売人、兵隊の奥さんと子供が隊列の後をぞろぞろついてくるので、大きな隊(中隊にははっきりとした定員がない)になると、こうした列外の民間人を誘導・指揮する古参の隊員が任命されることがありました。

【少佐】 Mayor, Major
聯隊には陣營管理が役目の将校がおり、古参中隊長の中から選ばれました。「great major」または「great sergeant」と呼ばれました。陣營の中に住む各中隊が店子とすれば、少佐は大屋さんのようなものです。中佐の次に位置し、中隊長より上位でした。これが少佐「major」の階級の始まりで、後に部隊の陣形を整える役目を負いましたが、今では単に階級名となり、専ら大隊長職を占めています。昔の大隊は戦争のたびに中隊が寄り合って編成する臨時組織でしたが、その大隊長も中隊長が互いに選挙して決めました。大隊長を出した中隊は次席の中尉が中隊長代理となり、大隊本部とその護衛となりました。
「少佐」の階級は英米系陸軍に独特のもので、佛蘭西や露西亜にはありません。少佐に該当する階級としては、「commandant」があります。レミニア陸軍は英国式の「少佐」を使用しています。

【中佐】 Kolonel lewtenant, Lieutenant Colonel
中隊が聯合して聯隊を編成する時に、副聯隊長(聯隊長代理)を古参中隊長(大隊長も中隊長の一人です)の中から選びました。これが中佐の階級名となりました。聯隊長の大佐は王様や重臣の御機嫌を取り結んだり、軍資金をひきだしたり、陰謀に荷担するために、宮廷に入りびたりでしたので、聯隊の普段の指揮は中佐がこれを執るのが普通でした。

【大佐】 Kolonel, Colonel
聯隊を編成して道路を行軍すると、長い縦列(kolon, column)ができるので、その長と云う意味で、聯隊長は縦列指揮官COLONEL(or column commander)と呼びました。それが大佐の階級名となりました。戰争が終わって聯隊が解散すると、大佐・中佐・少佐は、もとの中隊長(大尉)に戻りました。一種の学級委員のようなものです。

【将軍】 General, General
複数の聯隊を率いる侍大将が将軍で、戦争のたびに大佐から選ばれたり、日頃から戦争屋の看板をあげて宮廷に出入りし、武器・傭兵の口入屋をしたりしています。国王から莫大な軍資金を引き出して、戰争を請負う企業家です。たくさん儲けさせてくれる将軍のもとに聯隊長どもは駆けつけます。近代の絶対君主制のもとで常備軍が置かれるようになるまでは、こういう状態でありました。  →top


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