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将校の補充・進級・役種を解説します。(下士卒は、「兵役」をご覧下さい)

将校の除隊
 現役定限年齢
 後備役
 退役
 豫備役
 待命・休職
 停職
 免官
 剥官
将校の進級
 實役停年
 序列による進級
 豫後備役の進級
 特別進級
将校の補充
 兵科
 参謀科
 軍政科
 經理部
 軍醫部
 藥劑部
 獸醫部
 軍樂部
 法務部
将校の出世

★★ 将校の除隊 ★★

 将校准士官は終身官です。除隊した退役将校准士官でも階級名を公に使用し、軍服を着て外を歩けます。その時には陸軍禮式令に從った「敬禮」や「喇叭軍鼓吹奏」などの禮遇を受けます。公式行事でも席次は階級に從って決まり、民間人と一緒にはされません。また私物の拳銃や軍刀で規定に從った武装もできます。(除隊した下士卒は民間人の扱いなので、それをすると法律違反となって警察や憲兵に捕まります。これが将校准士官と下士卒の違うところです。)
 よく小説には、退屈を持て余している「少佐」と呼ばれる紳士や、近所のトランプ好きな「大佐」と呼ばれる老人がでてきます。こう云う除隊した軍人は、正式な官等を名乗れば、階級名の前に「豫備役」「後備役」「退役」と云う「役種」名が附いていて、今は軍人としてどう云う身分状態にあるのか、はっきりと判るようになっています。
 例えば入隊していても、「豫備役少尉」や「後備役中尉」とあれば、召集されて臨時に在隊している将校です。
 こう云う「役種」は、どうやって決まるのでしょうか、以下に説明します。
【現役定限年齢】  → top

 「分限令」によって将校は階級ごとに「現役定限年齢」(略して「定年」と呼ぶ)が定められています。會社の定年と同じです。満年齢が定年に達すると、「現役」から「後備役」に編入され、除隊になります。准士官も将校と同じ扱いです。
 定年は、進級の停滞を防ぐ意味があります。もし定年制度が無ければ、90歳の少尉すら存在し得ることになりますが、これでは、とても小隊長として突撃の先頭には立てません。
 定年の設定年齢は、戦闘兵科が若く、後方部門たる各部は少し遅くなっています。だいたい戰闘行動に體が從いて行けなくなる年齢が定年として設定されています。例えば小隊長として下士卒と共に徒歩で驅け回るのは40〜45歳くらいが限度であろうと考えられるので、中尉の定年は45歳となっています。  → top

《兵科》
40歳 特務曹長・少尉補・下士卒
45歳 中尉・少尉・准尉(小隊を率いて駈回らなくてはならないので此の當りが體力の限界と見做される)
48歳 大尉
50歳 少佐(佐官以上は乗馬本分となるので體力の劣る初老者も勤まる)
53歳 中佐
55歳 大佐・准将
58歳 少将
62歳 中将
65歳 大将・元帥

《各部》(後方任務は老人でも勤まるので多少長く設定されている)
45歳 特務曹長・少尉補相當官・下士卒
47歳 中尉・少尉・准尉相當官
50歳 大尉相當官
52歳 少佐相當官
54歳 中佐相當官
56歳 大佐・准将相當官
60歳 少将相當官
62歳 中将相當官

【後備役】  → top
 定年に達した将校は、その年度の最終日に「後備役」となり、除隊します。
 戰争になって臨時部隊が編成されたり、平時でも定員に缺員が出たり、演習で人手が足りなかったりすると、召集されて再入隊します。各兵科兵種階級ごとに、年齢の若い順から召集されます。召集された時の入隊先と、そこでの職務(戰時命課)は、平時から「動員計畫」で豫め決っています。
 例えば、後備役編入1年目で若年齢順第1位で序列上位の歩兵少佐は、戰時には獨立混成旅團の獨立歩兵大隊長です。序列下位者や老年者は兵站機關や後方勤務に充てられ、更に順位が低いと占領地や内地勤務となります。

【退役】  → top
 後備役になって6年が經つと、「退役」となります。もう召集される事はありませんが、しかし将校・准士官は終身官なので、「退役」となっても必要に應じ軍装して、軍刀・拳銃など個人装備を所持できます。除隊して民間にあっても、敵國軍隊と接したときには、抗戰する義務があります。

【豫備役】  → top
 定年に達する前に除隊すると、「豫備役」に編入されます。
 現役にある者が自分から除隊したくとも、陸軍大臣に申出が受理されない限り勝手に除隊するわけには参りません。同じく、まだ在隊したくとも、陸軍大臣に豫備役編入を命ぜられると、從わなければなりません。
 豫備役編入を命ぜられる主な理由には、病氣・障害で軍人が續けられない時や、軍の改編によって就くべき職が無くなった時、無能で職務が全うできない時(敗戰部隊の指揮官など)、不穏當な言動がある時(政治結社に加盟するなど)など、そのまま「現役」軍人でいると都合が悪い場合です。
 豫備役にあっても、召集されると再入隊します。豫備役のまま從軍し召集解除と同時に除隊するのが普通ですが、特別命令で現役に復歸して隊に残るケースもあります。
 現役定限年齢に達した豫備役将校・准士官は、その年度の終りに「後備役」に編入されます。

【待命・休職】  → top
 いきなり豫備役に編入とは普通なりません。前段階として、「待命」となります。俸給は4/5支給です。現役のままですが、隊に出勤せず自宅待機となります。
 待命となって1年經つと「休職」になります。俸給は3/5支給です。俗に「半給(duon payid, half paid)」将校と呼ばれます。
 休職2年後に「豫備役編入」となります。「待命」「休職」を飛び越して、いきなり「豫備役」となるケースはありません。

【停職】  → top
 不都合があって職に就くのを停止されている場合、俸給は3/10支給です。

【免官】  → top
 将校・准士官は終身官ですが、その身分を廢止して只の民間人となる場合は、「免官」となります。自分から申出る時は「依願免官」と云い、一生軍人でいるのがイヤになっただけなので、不名譽な事ではありません。
 國籍を失った時は、自動的に「免官」となります。しかし直ちに外國人として國軍に志願した場合は、そのまま将校・准士官の身分を繼續できます。志願を止めれば、その時點で自動的に「免官」となります。外國人志願将校・准士官は終身官ではないからです。

【剥官】  → top
 軍刑法により有罪となると、将校・准士官の身分を剥奪され、陸軍監獄に入っている間は、懲治卒と云う雑卒(二等卒の下)に降等となり、出獄後は一等卒となり将校・准士官の身分には戻れません。兵卒として兵役の現役期間を勤め、それが終了すると豫備役となり除隊します。しかし既に将校として在隊二年以上であれば出獄即日除隊となります。
 一般の刑法による有罪が確定すると、やはり剥官・一等卒に降等となります。  → top


★★ 将校の進級 ★★

【實役停年】  → top
 上の階級に進級するには、今の階級を最低何年以上經驗しなければならないか、を定めたのが、「實役停年」です。

半年 伍長
3年 軍曹
2年 曹長

2年 特務曹長
1年 少尉・少尉補・准尉
2年 中尉
4年 大尉
2年 少佐
2年 中佐
2年 大佐
1年 准将
3年 少将
4年 中将
0年 大将・元帥  (以上に就いては各部相當官も同じ)

 戰時には、實役停年は、半分に短縮されます。
 しかし平時には、上がつかえているので(進級の停滞)、實際に停年どおり進級することはなく、兵科兵種により違いますが、停年の2〜3倍はかかっています。戰争になって損耗が激しくなると、短期間で進級できるようになりますが、それも戰死傷の多い小隊長級の初級将校・准士官に限られています。よほど軍の臨時擴張が行われない限り、中隊長級以上は餘り速くなりません。それどころか終戰復員となるや折角進級して就いた臨時部隊・機關が解散して、平時部隊官衙の要員に餘剰が出てしまい階級に適當する職が明くまで何年も待命・休職となるケースもあります。(米軍は獨特の戰時臨時階級(temporary rank)制度があって、少し戰争が長引けば曹長が少佐になってしまったりします。これは平時の定員が非常に少なく、戰時には大擴張されるからです。南北戰争、歐州大戰が良い例です。カスター将軍は少尉から、あっと云う間に北軍義勇騎兵旅團の准将になりました。)

【序列による進級】  → top
 陸軍省軍務局人事課は、全将校を進級序列順に並べたリストを作り、これをもとにして進級を決定します。
 具體的には「實役停年名簿」を毎年の定期人事異動(8月)の前に(6月頃)調製します。兵科兵種各部ごとに、現役将校を階級順(同一階級は停年の古い順)に並べます。同一停年の将校を更に任官年次順に並べ、同一任官年の将校は戰功の高い順に並べ、同一戰功者は平時の勤務成績(實施學校・士官學校の修業成績を含む)順に並べます。(戰争に出て、功績をたて、勲章を澤山もらった者は、それだけ序列が上位になり、進級の機會が増えます。勲章が無くとも、長く戰場にいれば、それだけ多く危険に曝されていたという理由で、功績に加算されます。こうした功績は細かい基準により點數化されています。例えば戰時中に内地の留守部隊に居た場合は1點、占領地の守備部隊に居た場合は2點、前線の後方部隊に居た場合は3點、最前線の戰闘部隊に居た場合は4點、戰闘に参加した場合はその都度1點加算と云う風になります。戰功を樹て勲章を貰った場合は一挙に點數が増えます。平時の勤務成績は演習・競技會の勝數(例えば自分の所属する部隊が對抗演習で假想敵に勝つ、とか自分の指揮する部隊の部下が對抗演習や競技會で勝つなど)や無事故(事故には例えば部下から軍法會議で有罪となる者を出す、兵舎から出火する、部下から脱走者・自殺者・負傷者を出す、命令された目的地に部隊を率いて行軍するも遅参する、などがある)、學校・練習所の卒業修業成績(士官學校の卒業成績、集合教育の修了成績など)、善行(災害事故に於ける民間人の救助・保護、衛戍地に於ける民間親善・協力等)などがこまかく點數化されて評価されます。

《實役停年名簿の項目》
現官實役停年、任官年月日、列次(兵種ごとに古い順、同一兵種の中は階級順、同一階級の中は任官年次順、同一任官年次の中は戰功順、同一戰功の中は平時成績順)、職名(命課日付)、位階勲等功級、爵位、氏名、生年月日、出身學校期別、出身州縣、特業・特技

 各職の缺員を調査して、どの兵科兵種階級は何人の缺員補充をしなければならないか數字を出します。

《進級事務の實際》
 どの缺員を誰で埋めるかは、軍務局人事課が作成する候補者リストをもとに、缺員部署の長が申請します。リストに無い者の申請も可能です。
 原則として部隊内の職務は、部隊内の将校から補充します。部隊長が誰をどの職に就けるかの權限を持っています。しかし進級の順序は、軍務局人事課の提供する進級序列リストに從わなければなりません。
 部隊外の職(司令部や官衙)に就くには、部隊長の推薦と、先方の長官の要請の兩方が必要です。
 どうしても缺員が埋まらないときは、待命・休職将校を復職させる、豫後備役将校を召集する、下位の階級者に代理させる、退役将校や民間人を特別任官させる、と云った臨時の處置を取ります。
 各兵科各部内の人事異動の最終調整・決定は、それぞれの兵監・總監が行います。騎兵科は騎兵監、砲兵科は砲兵監、工兵科は工兵監、輜重兵科は輜重兵監、飛行兵科は飛行兵監、經理部は陸軍省經理局長(主計總監)、軍醫部は陸軍省醫務局長(軍醫總監)、法務部は陸軍省法務局長(首席勅任法務官)、宗務部は陸軍省宗務局長(從軍主教)、その他の兵科・部(歩兵科、憲兵科、獵兵科、兵器部、軍樂部)は陸軍省軍務局長(少将)です。

【豫後備役の進級】  → top
 豫後備役将校・准士官の進級は、平時はありません。但し召集されて入隊すると、その期間が實役停年に加算されます。進級の序列は、現役・豫備役・後備役の順となります。同一兵科兵種階級の現役の最後の一人が進級してしまい、なお上位階級に缺員があると、ようやく應召の豫備役が進級する順番が回ってきます。豫備役が總て進級してしまうと、後備役が進級する順番が回ってくるという具合です。戰時に實役停年が半分に短縮されるのは現役と同じです。
 戰時には、動員部隊に豫後備役の就くべき職が豫定されており(動員計畫による戰時命課)、適當する同一兵科兵種階級の豫後備役の若い順から召集されます。例えば、現役を退いて1年目の最も若い後備役「大将」は、戰時には召集されて留守軍司令官の職に就きます。
 應召中、功績顕著な豫備役将校准士官は、復員後に進級する事があります。(この功績は復員後すぐに参謀本部の功績調査委員が陸軍省軍務局人事課に功績簿を提出して論功行賞に反映されます。顕著な手柄を立てる他に長く戰地で任務に就き危険に曝されていれば功績として、その期間が點數に加算されます。從軍記章・賜金の給附、勲章の授與、爵位の授與など、復員軍人を慰める手段が廣く用意されます。平時は進級する機會が殆ど無い豫後備役の将校は、このような時に進級ができます。)

【特別進級】  → top
 進級序列によらない特別な進級があります。數階級を飛越して進級する事が可能です。この場合は「臨時(temporary)」辞令なので、進級序列は元の階級のままです。必要が無くなった時には、もとの階級に復歸します。
? 戰時に民間で編成された義勇隊の将校は正規の軍人ではなくとも、臨時の将校辞令が發給され、階級の上に「臨時」の名稱を附けます。例えば、退役「少尉補」が引退生活を送っている村に敵軍が侵入してきて、にわかに義勇隊中隊長に任命されると、「臨時大尉」に特別進級する、と云う具合です。
? 戰時において誰もが認める功績抜群の軍人は、所属の司令官の權限で特別に抜擢して進級させることができます。例えば、名譽の戰死者は将校准士官下士卒の別なく一階級の特別進級となります。この場合、兵卒はそれ自体がひとつの階級で、上位の階級は伍長となるので、二等卒が戰死して名誉進級すると、一等卒になるのではなくて、伍長となります。
? 必要な人材を民間から招聘して臨時将校に任官させる場合があります。例えば、秘密兵器の開發に必要缺くべからざる工學博士を臨時編成の研究部隊幹部に召集し、彼が豫備役「少尉補」であるので、これを「臨時大佐」に特別進級させることがあります。
? 聯合共和國首長は同時に國軍總司令官を兼ねるので、新任の首長は兵籍に編入され臨時「大元帥」に任官します。首長就任前に既に兵籍に編入されており、その階級等級が第一國民兵役「輜重輸助卒」と云う最下級の雑卒であっても、就任と同時に軍人最高位の「大元帥」に特別進級するのです。首長を辞任した時には、臨時「大元帥」の階級も必要なくなるので、もとの階級(この例では、第一國民兵役「輜重輸助卒」に復します。)
? 定年で除隊する将校のうち實役停年を満たしている老巧者を後備役編入直前に1階級進級させます。多少なりとも年金が増えるので一種の退職金のようなものです。

特別進級している間の日數は實役停年に加算されるので定期の進級對象となります。例えば豫備役少尉補が臨時少佐に特別進級している間に實役停年が満たされ上位階級への進級資格が出来、順番が廻ってきて豫備役少尉に進級すると云う事があります。特別任官中の功績は本来の階級の功績にも加算されるので特別任官者は本来の階級に於ける進級序列も上位になります。   → top


★★ 将校の補充 ★★

【兵科の補充】  → top
 現役将校の任官には、次のルートがあります。

1 「士官學校生徒」を卒業時に「少尉」に任官させる。
(入校前に志願兵として志望部隊に1年間入隊し、「士官候補生(kadet)」(上等兵〜軍曹)として下士卒の兵營生活を体験する。所属部隊から士官學校に分遣され、入校1年半後に「見習士官(oficir aprentic)」(曹長)として原隊にもどり半年間の士官勤務を體驗し、部隊全将校による将校詮考會議で将校適任と認められれば(大抵認められますが)士官學校卒業と同時に任官する。
士官學校生徒の出自には、「陸軍幼年學校卒業生」「勅許學校卒業生」「中學校卒業生」「高等學校卒業生」「嚮導團優等修了生徒」「學力檢定試驗合格者」があります。)
2 下士・准士官から選抜した「少尉候補者」を「少尉」に任官させる。
(部隊内の曹長、特務曹長が少尉候補者試驗に合格して士官學校學生となり、生徒とは別の1年間の将校教育課程を修了する。)
3 「准尉」(准士官)の進級序列先任者を「中尉」に任官させる。(「准尉」は「少尉」と事實上同列とみなされているので、「少尉」は飛ばしていきなり中尉になります)
4 一年志願兵出身の豫備役「少尉補」(准士官)のうち現役志願者した者が部隊全将校による将校詮考會議で将校適任と認められれば、現役「少尉」に任官させる。
(一年志願兵は中等學校以上の卒業者が、二等卒で志願入營し、3箇月後に一等卒、2箇月後に上等兵、2箇月後に伍長勤務、2箇月後に伍長、満期退營時に豫備役軍曹、豫備役2年目以内に将校教育課程に志願入營し3箇月の修業後に少尉補任官)
5 豫備役将校を現役に復歸させる。

【参謀科の補充】  → top
参謀将校の補充には、次のルートがあります。

1 隊附を3年以上經驗し参謀本部の實施する銓衡試驗に合格した兵科中少尉は「参謀本部第五部」(参謀教育)に「参謀學生」として原隊から派遣され参謀實務を習得する。修了後は参謀本部、高等司令部の大尉参謀に補職される。
出身兵科の高等司令部に勤務するのが原則であるが(例えば歩兵科出身者は歩兵師團参謀、騎兵科出身者は騎兵師團参謀、飛行兵科出身者は飛行軍隷下諸師團参謀)、軍司令部以上の補職は出身兵科を問わない。

【軍政勤務の補充】  → top
陸軍省に勤務する将校の補充には、次のルートがあります。

1 隊附を3年以上及陸軍諸官衙を3年以上經驗し陸軍大學校の實施する銓衡試驗に合格した兵科少佐は「陸軍大學校軍政科」の「軍政學生」として軍政實務・國防政策の要諦を習得する。修了後は陸軍省及軍政機關に補職される。

【經理部の補充】  → top
經理部現役主計の任官には、次のルートがあります。

1 「經理學校生徒」を卒業時に「三等主計」に任官させる。
(入校1年目に部隊に志願入隊し、「主計候補生」(一等卒、計手補、二三等計手)として下士卒の兵營生活を體驗する。所属部隊から經理學校に分遣される形をとり學校に戻る。入校2年目に「見習主計」(一等計手)として原隊に帰り士官勤務を體驗する)。經理學校卒業後、「三等主計」に任官する。
2 「三等主計候補者」を「三等主計」に任官させる。
(部隊内の一等計手、上等計手が三等主計候補者試驗に合格して經理學校學生となり、生徒とは別の1年間の主計教育課程を修了する)。
3 「准主計」(准士官)の進級序列先任者を經理學校學生とし1年間修業後に「二等主計」に任官させる。
4 豫備役主計を現役に復歸させる。
5 陸軍より學費・生活費を支給されて得業士号を取得した依託生徒(高等商業學校)・依託學生(商科大學)を經理學校主計候補生とし、2箇月間の修業後「三等主計」(得業士)ないし「二等主計」(學士)に任官させる。(任官後3年間を現役で義務服役後、除隊希望者は豫備役編入とする)
6 兵科他部からの轉部者を經理學校で1年間教育し、該當する階級の主計に任官させる。例えば「歩兵中尉」は「二等主計」。

【軍醫部の補充】  → top
軍醫部現役軍醫の任官には、次のルートがあります。

1 醫師免許所持者を軍醫に任官させる。
(「軍醫候補生」(看護卒、看護手、二三等看護長)として歩兵聯隊で1ヶ月間兵營生活を體驗させ、さらに「見習軍醫」(一等看護長)として軍醫學校・衛戍病院で1ヶ月間勤務の後、豫備役「軍醫補」(准士官相当)に任官させる。このうち志願者を現役に編入し、醫學得業士は「三等軍醫」に、醫學士は「二等軍醫」に、醫學博士は「一等軍醫」に、醫學大博士は「三等軍醫正」に任官させ、部隊に配属する。このうち陸軍より學費・生活費を支給されて醫師免許を得た依託生徒(醫學専門學校)・依託學生(醫科大學醫學科)は、「三等軍醫」(得業士)ないし「二等軍醫」(學士)に任官させる。任官後3年間を現役で義務服役した後、除隊希望者を豫備役編入とする。)
2 豫備役軍醫を現役に復歸させる。

【藥劑部の補充】  → top
藥劑部現役藥劑官の任官には、次のルートがあります。

1 藥劑師免許所持者を藥劑官に任官させる。
(「藥劑官候補生」(磨工卒、磨工手、二三等磨工長)として歩兵聯隊で1ヶ月間兵營生活を體驗させ、さらに「見習藥劑官」(一等磨工長)として軍醫學校・衛戍病院で1ヶ月間勤務の後、豫備役「藥劑官補」(准士官相當)に任官させる。このうち志願者を現役に編入し、藥劑學得業士は「三等藥劑官」に、藥學士は「二等藥劑官」に、藥學博士は「一等藥劑官」に、藥學大博士は「三等藥劑正」に任官させ、部隊に配属する。このうち陸軍より學費・生活費を支給されて藥劑師免許を得た依託生徒(藥學専門學校)・依託學生(醫科大學藥學科)は、3年間を義務服役した後、除隊希望者を豫備役編入とする。)
2 豫備役藥劑官を現役に復歸させる。

【獸醫部の補充】  → top
獸醫部現役獸醫の任官には、次のルートがあります。

1 獸醫師免許所持者を獸醫に任官させる。
(「獸醫候補生」(蹄鐵工卒、蹄鐵工手、二三等蹄鐵工長)として歩兵聯隊で1ヶ月間兵營生活を體驗させ、さらに見習獸醫(一等蹄鐵工長)として兵器學校で1ヶ月間勤務の後、豫備役「獸醫補」(准士官相當)に任官させる。このうち志願者を現役に編入し、獸醫學得業士は「三等獸醫」に、獸醫學士は「二等獸醫」に、獸醫学博士は「一等獸醫」に、獸醫學大博士は「三等獸醫正」に任官させ、部隊に配属する。このうち陸軍より學費・生活費を支給されて獸醫師免許を得た依託生徒(高等農林學校獸醫科)・依託學生(農科大學獸醫學科)は、3年間を現役で義務服役した後、除隊希望者を豫備役編入とする。)
2 豫備役獸醫を現役に復歸させる。

【軍樂部の補充】  → top
軍樂部現役樂長の任官には、次のルートがあります。音樂學校卒業生を任官させるルートはなく、叩き上げの樂手から選抜して樂長にします。統率上その方が適しているからでしょう。
従って中等以上の學校を卒業していても音樂學校を卒業していても音樂得業士號を持っていても他兵科他部のように一年志願兵や依託生徒を經て士官相當官になるという途はありません。音樂學校出の演奏家・聲樂家・指揮者・作曲家は徴兵檢査に合格して入營しないといけなくると軍樂隊を志願し大抵はそこに配属され兵卒相當の樂手補になります。そこから年功序列で進級してゆきます。一等樂手になったら三等樂長候補者試驗を受け士官相當官の樂長になる人がいますが、戰時以外は現役満期になると、皆さっさと退營して豫備役になります。

1 「三等樂長候補者」を「三等樂長」に任官させる。
(部隊内の一等樂手、上等樂手が三等樂長候補者試驗に合格して歩兵學校軍樂學生となり1年間の樂長教育課程を修了する)。
2 部隊内の「准樂長」(准士官)の進級序列先任者を「二等樂長」に任官させる。
3 豫備役樂長を現役に復歸させる。

【法務部の補充】→ top
法務官、典獄は文官なので「文官分限令」を適用され、軍人の補充とは異なっています。

法學得業士以上の學位を持つ志願者を法務官試補ないし監獄理事(雇員)として1年間、軍法務部ないし陸軍監獄で勤務させ、法務官補ないし典獄補(判任官)に任官させる。
このうち陸軍より學費・生活費を支給された依託生徒(法律専門學校)・依託學生(法科大學法律學科)は3年間の奉職義務がある。  → top


★★ 将校の出世 ★★

【普通の将校が辿る履歴】→ top
士官學校を卒業して現役少尉に任官し、同期一薺に年功序列で大尉まで進級します。
その先は抜擢進級となり少佐になるのは成績がものを云います。成績は先ず戰功が優先され、その次が演習をうまくこなせたか、隷下部隊を滞りなく運營指揮できているか、が評価されます。何か事故が出来すると其の分が減點となります。失火で兵舎が全焼したとか兵隊が脱走したとか、そういう事が成績に響きます。逆に部下が戰功を挙げたり、競技で優勝したり、人命救助、事故未然防止などの善行をしたり、すると、そういう人材を育てた技量が評価され成績が上がります。大抵は現役定限年齢に達する迄に全員が少佐になれます。大體二人に一人は中佐になれます。少佐止まりの人は大隊長を外れて師團軍法會議判士・聯隊區司令官・學校配属(豫備士官訓練團教官)等の閑職に廻され、そこが軍歴の終着點になります。現役定限年齢に達した時に實役停年を満たしていれば豫備役編入直前に中佐に進級します。
中には運悪く何等かの故障や事故で大尉止まりで豫備役編入になったり依願免官で現役を去る人も居ます。
躯體の故障で勤務に耐えられなくなった場合は輜重兵や憲兵に轉科したり、經理部に轉部します。
さてそつなく少佐を務めた成績上位の人は中佐になりますが、そのうち四人に一人は大きな事故に遭わない限りは大佐に進級し、大體そこで現役定限年齢に達して豫備役編入となります。大佐から少将になるのは二人に一人くらいです。 いったん將官になると平時では戰功を得る機會が無いので勢い年功序列で上位の命課を得て進級していく事になりますが、その間に現役定限年齢を迎えて現役を去る人がでます。其の為若いときに戰功を多く挙げた人の方が上位の職を得ます。外地の守備隊司令官から始めて内地の旅團長に、中将になると地方の師團長から始めて首都軍管區の師團長に、大将になると外地駐屯軍司令官から始めて内地の軍司令官に、という風に順を追って轉勤を繰返します。そして運が良ければ最後に元帥を拝命して元帥府に列する事になります。これは戰時の方面軍司令官要員です。
これとは別に、中少尉の時に志願して参謀コースを歩む人も居ます。参謀本部の實施する競争試驗に合格すると原隊から参謀本部第五部の参謀教育課程に派遣され、其處を修了後に参謀将校になります。實施部隊には配属されず、高等司令部参謀部員として作戰・情報・後方の業務に専念します。参謀将校の序列に従って進級しますから、士官學校の同期生とは進級速度が異ります。緻密さと勤勉を要求される地味な仕事で進級もそんなに華々しくないので、頭は廻るけれど實戰が苦手な人向きです。運が良ければ参謀總長大将となって國防方針の策定を始めとする國軍の實質指揮を任されます。
また實施部隊から離れて軍政系統に進む人も居ます。軍政機關の幹部が見込んだ少佐を部隊及官衙から抜擢して陸軍省・同外局の職に任じます。陸軍大學校の軍政科で政治・外交の基本を學んで部局の課僚(中少佐)に就任し、課長(大佐)、局長(少将)、次官(中将)、陸軍大臣(大将)と進みます。陸軍大臣が替ると人事の刷新が行われて高級役職者は再び實施部隊に戻ったり閑職に就く場合もあり得ます。また同期生と同じ進級速度を保つために大佐までは實施部隊と陸軍省の間を行ったり来たり轉勤する事もあります。
軍政畑の将校は定年を迎え豫備役編入となった後は、軍需關聯の國策會社の階級に見合った職に再就職する途があります。陸軍大臣には外地の總督に轉じた後、勲爵士の位(領地を持たない准貴族)を授けられる途があります。

【下士出身の将校】→ top
准尉から特別進級した中尉や、曹長から少尉候補者を經て任官した少尉は、士官學校士官候補生から少尉になった人と比べて任官時點で既に十年近く歳をとっています。進級序列が正規の士官學校卒業者に比べて後回しなので、やっとこ大尉になり、次の少佐に進級の順番が来る迄に現役定限年齢を迎え豫備役となる人が殆どです。所属兵科の部隊が擴張されて人材が足りなくなったり、戰場で手柄を立てたりすると運良く少佐に進級しますが、中佐になる例は非常に稀です。

【豫備役将校】→ top
豫備役編入となった将校には俸給がありません。然し13年以上軍務に就いていると現役時代の俸給の三分の一が恩給として貰えます。勤續12年目以上からは一年に就き俸給の百五十分の一が増額されます。
恩給受給年限13年に達しない内に豫備役となると、一時恩給と云う退職金を呉れます。俸給月額に在職年數を掛けた額です。(士官學校在學中に士官候補生伍長となった時から算定する)
例えば少佐で豫備役となった場合、少佐は大抵は40歳代なので士官學校卒業以来13年以上は奉職していますから、俸給月額54圓の三分の一で18圓の恩給が附きます。假に40歳の少佐とすれば、士官候補生軍曹となるのが18歳なので、現役に在った年數は23年、従って11年分の恩給増額3圓96銭が加算され、計21圓96銭が月収となります。これは現役時代のほゞ半額で、中尉の二等給並の水準なので、それは困ると再就職先を探す事になります。子供が居て學費が掛かるようだと尚更です。或いは就職先が見つからなければ田舎の安い家賃の借家に引籠って清貧に甘んずる事になります。氣の利いた人は恩給受給資格が出来た途端に依願免官を願出て軍を辞め、より有利な職に轉じますが、餘程特殊な才能や技能或いは人脈・資産が無いと、學歴が士官學校だけでは難しい選択となります。

【後備役将校】→ top
現役定限年齢を迎えると在郷軍人となり恩給だけで暮す事になります。士官學校卒業者は途中で豫備役にならない限りは少佐まで進級できます。少佐の現役定限年齢は50歳です。現役定限年齢を迎える前日に餞別代りに中佐に進級させて呉れますが、其の為に定限年齢が伸びる譯ではありません。士官候補生軍曹となるのが18歳なので、現役に在った年數は32年、中佐の俸給月額は75圓、12年間奉職していた後備役将校に生涯に亘って支給される普通恩給月額は其の1/3の25圓、勤續13年目から1年に就き1/150が加算されるので、加算對象となる20年分の10圓が加算され、計35圓が月収となります。これは現役時代のほゞ6割半で、大尉三等給並の水準なので、贅澤をしなければ、そこそこ暮らせます。子供の學費が掛かる時は再就職先を探す事になります。或いは就職先が見つからなければ諸色の安い田舎暮しとなります。
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