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軍人の勤務(權利義務・紀律)を解説します。

軍人の義務
軍人の特典
服務紀律
陸軍刑法

★★ 軍人の義務 ★★

【民法上の制限】
☆ 現役軍人は、現役を終了するまでは國籍を離脱できません。外國人志願者はこの限りではありません。(戸籍法)
☆ 現役軍人は、法律上の後見人・後見監督人を辞退することができます。(民法)
☆ 現役軍人の法律上正式な婚姻は、所轄の大臣・長官の認可がないとできません。海軍では妻は16歳以上でなくてはなりません。(陸軍現役軍人婚姻條例、海軍現役軍人結婚條例)

【現役軍人と應召中の軍人の禁止職】
☆ 現役将校は文官に任ぜられると、豫備役編入または休職となります。文官の職を辞した時點で、再び現役に復歸または復職します。(陸海軍将校分限令)
☆ 現役軍人と應召中の軍人は、貴族院議員の選挙権・被選挙権を持つことができません。(貴族院議員選挙法)
  貴族の現役軍人と應召中の軍人が襲爵して貴族院議員となった場合、豫備役編入となります。現役を續けるには、議員の職を辞退しなければなりません。(陸海軍将校分限令)
☆ 現役軍人と應召中の軍人は、庶民院議員の選挙権・被選挙権を持つことができません。(庶民院議員選挙法)
  また市町村の公務に参與できず、州縣郡市區町村會議員の選挙權・被選挙權を持てません。(市區町村規則・州縣郡會規則)
☆ 現役軍人と應召中の軍人は裁判の陪審員を引受けることができません。(陪審法)

【居住移転の制限】
☆ 陸軍現役軍人は衛戍地(守備地域)内に住まなければなりません。(衛戍勤務令)
  陸上勤務の海軍軍人は、勤務地のある市町村ないし隣接市町村に住まなければなりません。(陸上勤務者居住規則)

【政治活動の禁止】
☆ 現役軍人・應召中の軍人は、政治集會に参加したり、政治結社に加入できません。(治安警察法)
☆ 入營中の軍人は政治に關する請願ができません。(陸軍刑法・海軍刑法)
☆ 入營中の軍人は、政治に関する上書・建白・演説・文書による意見公表ができません。(陸軍刑法・海軍刑法)

【言論の制限】
☆ 現役軍人・應召中の軍人は、新聞紙の發行人・編集人になれません。(新聞紙法)
☆ 現役軍人・應召中の軍人・軍属が著作(出版・投稿)を公表する時は、事前に所属長官の許可がいります。(陸軍軍人軍属著作規則・海軍部内印刷出版規程)

【刑法訴訟上の制限】
☆ 現役・應召中の軍人の刑事事件は、司法省の裁判所ではなく陸海軍の軍法會議が取扱います。(陸海軍刑法)
☆ 司法省の裁判所が現役軍人・應召中の軍人を召喚・勾引・勾留・證人喚問する時は、本人ではなく所属上官に對して令状を送達し、その承認のもとに執行します。兵營・艦船・官衙内での押収・捜索は所属上官の立會のもとに行います。(治罪法)

【民法訴訟上の制限】
☆ 現役軍人・應召中の軍人・軍属の民事事件は衛戍地または軍艦定繋所を管轄する裁判所が扱います。其他の軍人は民間人と同じく、住所を管轄する裁判所が扱います。(民事訴訟法)
☆ 送達・證人喚問・強制執行・債權差押は所属上官に委嘱して行います。兵營・艦船・官衙内では軍法會議が行います。(民事訴訟法)

【その他】
☆ 營内(兵營の中)・艦内(艦船の中)に居住する軍人軍属は住居不可侵の權利がありません。勝手に自分の居室に人が入ってくるのを禁止できません。
☆ 所属上官は、軍紀維持と機密保持を目的として、發信前の信書を檢閲できます。内容が不都合な場合は書き直させます。(軍令・艦隊令)
☆ 所属上官は、軍紀維持を目的として、營内・艦船内にある軍人軍属の私物を没収することができます。(軍令)
☆ 信仰は「軍人の義務に違反しない限り」認められます。そのため信仰による兵役拒否は認められません。(勅令)  
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★★ 軍人の特典 ★★

【納税】
  入營中の軍人軍属の俸給・給養・手當・賜金には税金がかかりません。
  退營後の軍人軍属の賜金・年金・恩給にも税金がかかりません。(所得税法)

【割引】
  鐵道・船舶・航空機を利用する時は、三等料金が半額となります。二等以上や急行の料金は割引になりません。
  劇場・映畫・博物館などの普通入場料も普通席は半額です。特等席は割引になりません。(勅令)

【兵器の携帯】
  入隊中の軍人は、平時戰時にかかわらず兵營外でも兵器を携帯する事ができます。また将校は除隊後も、私物の拳銃・軍刀を公に所持・携帯できます。退役後も将校の身分は失わないので(終身官)、生涯にわたって拳銃携帯・帯刀が可能です。
  将校・准士官以外の在郷軍人(下士卒)及び民間人が兵器を携帯するには、警察の許可が必要です。(勅令)

【軍服の着用】
  将校准士官は除隊後・退役後でも軍服を公に着用できます。
  在郷下士卒は公務に服する時のみ軍服を公に着用できます。例えば在郷軍人會から徴兵檢査の會場整理の手傳に出る時や、學校の兵式體操の先生をしている時、民間防衛に参加する時などは、軍服着用となります。(勅令)

【遺言】
  從軍中の陸軍軍人・乗艦中の海軍軍人が遺言をする時は、證人と将校・同相當官の立會のもとにこれを作成でき、さらに瀕死となった時には、證人の立會のもとに口頭のみで遺言ができます。普通は規程の文書(自筆證書、公正證書、秘密證書)の形に整えて初めて法的効力がでますが、軍人の遺言は文書がなくとも法的効力があります。(民法)

【榮典】
  軍人にのみ授與される勲章・記章・褒賞・年金・恩給があり、文官より手厚くなっています。(勅令)  
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★★ 服務紀律 ★★

【宣誓】
☆ 入隊式で、所属上官が軍人の心得「讀法」を讀み聞かせ、その内容を記した「誓文」に入隊者が署名します。(「讀法」は軍刑法と懲罰令が整備される以前は、主に禁止事項を述べた内容でした)
☆ 傳統ある部隊では、軍旗に手を添え宣誓するところもあります。

【懲罰】
☆ 軍刑法が適用されない輕度の紀律違反者を罰するため、「陸軍懲罰令」があります。所属上官が懲罰権を持ち、下士卒は中隊長が、将校准士官は部隊長(聯隊長、獨立大隊長、獨立中隊長、獨立小隊長)が懲罰を決めます。入營中の召集軍人・軍服着用の在郷軍人・軍属・軍生徒も適用を受けます。

懲罰の種類
(士官准士官)
  譴責
  輕謹慎: 自宅ないし自室にて蟄居、訪問者接見禁止、1割減俸。1〜30日間。過失犯を罰する。

  重謹慎: 同上、2割減俸。故意犯を罰する。
(下士)
  譴責
  輕營倉: 營倉に拘禁し會話を禁ず、減給5割(營外居住者2割)。1〜30日間。過失犯を罰する。
  重營倉: 寝具なし、食事は麺麭・水・塩のみ、減給8割(營外居住者5割)。1〜30日間(3日にうち1日は輕營倉の待遇とする)。故意犯を罰する。
  免官: 一等卒に降す。改悛の状無き場合のみ。
(兵卒)
  禁足: 勤務・演習・教育の他は外出禁止(營内居住者は兵營外出禁止)(營外居住者は居宅外出禁止)
  苦役: 勤務・演習・教育の他は外出禁止(厠掃除・炊事當番・土木作業など重勞働に連續指名する)
  輕營倉
  重營倉
  譴責(在郷軍人のみ)
  降等: 一等級下に降す。改悛の状無き場合のみ。
(在郷士官准士官)
  譴責
  禮遇停止(1日以上1年位内の軍人待遇停止、軍服着用禁止)
(在郷下士)
  譴責
  免官
(在郷兵卒)
  譴責
  降等

代罰
故ある時は營倉を免じ他の罰目に代へる事が出来る
  下士卒の階級にある學生生徒: 重營倉1日→禁足3日、輕營倉1日→禁足2日
  兵卒: 重營倉1日→苦役3日、輕營倉1日→苦役2日
  營外居住者: 重營倉1日→禁足3日

罰權
  軍司令官、師團長、兵監: 全罰目
  旅團長、聯隊長、衛戍司令官、分遣團隊長、學校長:(免官・降等は直属司令官の許可を要す): 全罰目
  大隊長: 士官准士官(譴責、謹慎10日以内)、下士(譴責、營倉20日以内)、兵卒(營倉30日以内)
  中隊長: 士官准士官(譴責)、下士(譴責、營倉10日以内)、兵卒(營倉20日以内)
俘虜
  在營軍人と同様の罰則を科す。

☆ 海軍には同様に「海軍懲罰令」があります。
懲罰の種類
  謹慎(准士官以上)
  苦役(下士卒以上)
  禁足(下士卒)
  拘禁(下士卒)
  笞打(下士卒)
  降等(下士卒で改悛の状無き者)  
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★★ 陸軍刑法 ★★

以下の罪があります。ここにある罪は陸軍軍人に適用されますが、民間人にも適用されるものがあります。また、ここに無い罪は軍人といえども普通の刑法が適用され、司法省の裁判所で扱われます。
陸軍所属の學生生徒、軍属、陸軍勤務に服する海軍軍人にも適用されます。

叛亂罪
    叛亂
        結黨執兵器叛亂(首魁、謀議参與、指揮、諸般職務從事、附和随行)
        叛亂目的結黨軍用物劫掠
    利敵
        軍隊軍用物軍用地交通路利敵交付・損壊
        利敵間諜・敵國間諜幇助
        軍事機密利敵漏泄
        利敵嚮導・地理指示
        司令官降伏利敵強要
        守地放棄
        隊兵解散・壊走混亂惹起・連絡集合妨害
        俘虜利敵奪取・逃走幇助
        軍用物故意缺乏
        虚偽命令通報報告
        造言飛語・敵前叫呼喧躁
擅權罪
    私戰
        外國ニ對シ故無ク戰闘ヲ開始スル
        講和・休戰ヲ知リテ故無ク戰闘ス
    擅ニ軍隊ヲ進退セシム
    命令ヲ待タス故無ク戰闘スル
辱職罪
    司令官故無ク降伏シ若ハ要塞ヲ敵ニ委ル
    野戰司令官故無ク隊兵ヲ率ヒ降伏ス
    司令官兵ヲ率ヰ逃避スル
    司令官故無ク守地若ハ配置ノ地ニ就カス又ハ其地ヲ離ル(敵前、戰時・軍中・戒厳地境、其他)
    司令官故無ク出兵要求ヲ肯セス
    将校輸送船舶内ニ在テ敵ニ遭遇シ隊兵ヲ率ヒ擅ニ其船舶ヲ退去ス
    部下多衆ノ共同犯罪ノ鎮定ヲ蓋サス
    哨兵故無ク守地ヲ離ル(敵前、其他)
    哨兵睡眠又ハ酩酊シ職務ヲ怠ル(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    警戒又ハ傅令ノ勤務ニ服スル物故無ク其勤務ノ處若ハ隊伍ヲ離レ又ハ至ルヘキ地ニ至ラス(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    哨令違反(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    戰時・軍中・戒厳地境ニ於ケル命令通報報告ヲ詐ル
    軍事機密ニ属スル圖書物件ヲ敵ニ委セサル法ヲ蓋サス
    軍用ニ供スル物ヲ故無ク缺乏セシム
    健康ヲ害スヘキ飲食物ヲ配給スル
    從軍・危險勤務免脱目的詐欺行為(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
抗命罪
    單純抗命(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    黨與抗命(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    上官ノ制止ニ從ハス暴行
暴行脅迫罪(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    上官傷害暴行脅迫
        單純
        黨與
        用兵器凶器
        黨與用兵器
        致死
    上官殺害
    上官殺害傷害暴行脅迫豫備
    哨兵暴行脅迫(文民適用)
        單純
             黨與
        用兵器凶器
        黨與用兵器凶器
    上官哨兵以外ノ陸軍軍人ニ對スル暴行脅迫
        單純
        黨與
        用兵器凶器
        黨與用兵器凶器
    多衆集合暴行脅迫(首魁、指揮、率先、附和随行)
    職権濫用陵虐
侮辱罪
    上官侮辱
        面前侮辱
        公然侮辱
    哨兵面前侮辱(文民適用)
逃亡罪(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    單純
    黨與
    奔敵
軍用物損壊罪(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    軍用物焼毀
    露積軍用物焼毀
    軍用物破裂損壊
    航空機破壊
    軍用交通路損壊
    軍用物毀棄傷害
掠奪罪(文民適用)
    掠奪
    強姦掠奪
    戰死傷者被服財物褫奪
    掠奪褫奪傷害
    掠奪褫奪致死
俘虜幇助罪(文民適用)
    俘虜逃亡幇助
        單純
        看守・護送者犯
        逃走具供與・便宜供與
    俘虜奪取
    逃走俘虜蔵匿隠避
違令罪
    詐欺硝所通過・硝兵制止違背・哨令違背(文民適用)(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    在郷軍人召集期限故意遅参(敵前、軍中・戒厳地境、其他)
    兵役免脱目的詐欺行為
    在郷軍人召集免脱目的詐欺行為
    虚偽命令通報報告
    造言飛語(文民適用)
    空砲命令違背
    硝兵衛兵故無ク銃砲發射ス
    急呼集不應
    政治關與
    結黨
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