【建物配置】
歩兵聯隊兵營の建物配置例(他にも、地形や部隊の歴史によって、いろいろヴァリエーションがあります)【兵舎】__________________北門________________ | | |【醫務室】 【酒保・下士集會所】 【洗濯場】【糧秣倉庫】| | 物干場 【糧秣倉庫】| |【浴場】物干場 【浴場】物干場 【浴場】物干場 【糧秣倉庫】| |【1號炊事場】 【2號炊事場】 【3號炊事場】 | 西門 | |【厠】【面洗場】【厠】【面洗場】【厠】【面洗場】 【營倉】| |【 1號兵舎 】【 2號兵舎 】【 3號兵舎 】 【面會所】【衛兵所】| | 營門 | 【将校集會所】【聯隊本部】| | 營庭 【道場】 庭園 | | 馬場 | | 水飼場 | |【射撃場】 【被服倉庫】【兵器倉庫】【 砲廠 】【 車廠 】【 厩 】| | 【被服倉庫】【兵器倉庫】【陣營具倉庫】【 車廠 】【 厩 】| | 【縫工場 】【銃工場 】【豫備倉庫 】【蹄鐡工場】【獸醫室】| | 【信號室】| | | | | | 火藥庫 | |________________南門__________________| 實彈射撃練習や煙幕・瓦斯・機動訓練などは、別にある練兵場を使用します。
兵舎は、4箇中隊が入る大きな長方形の2階建、と決っています。しかし歴史の古い聯隊には、いろいろなヴァリエーションがあり、2箇中隊しかはいらない小さな兵舎、6箇中隊はいる兵舎、3階建の兵舎なども使用しています。
陸軍省經理局が建築基準を決めます。
ただし、材料は、温暖な地方では木造ですが、寒冷地では石造や煉瓦積となっています。また建軍當初やそれ以前の古くからある兵舎には、規畫から外れたものが澤山あります。外地では中隊ごとに中庭附の館を持っているところもあります。
(守備隊の小さな砦では、規畫は無視します。兵員數も一箇中隊未満なので、小隊ごとに平屋建ての小屋に住んだりします。砦といっても西部劇にでてくるような高い柵で囲った頑丈なものではなく、まったく柵も何も無い小駐屯地もあります。要塞では、城壁の中、土壘の地下など、防御に有利な構造を選んで兵室を設けます。)
兵舎の例
(4箇中隊を収容。各中隊は2階も使用、石畳吹抜通路に大階段あり) 歩兵聯隊には、この兵舎が3棟(3箇大隊分)ある。 2棟(1棟6箇中隊)になっている兵營もある。 1階 ___ _____ _______ _____ ___ |第1 |石|中隊|第2|石|中隊 | 第3|石|中隊|第4|石|中隊 | |___|畳|__|__|畳|___|___|畳|__|__|畳|___| |___ 吹 _____ 吹 _______ 吹 _____ 吹 ___| | |抜| | |抜| | |抜| | |抜| | |___|通|__|__|通|___|___|通|__|__|通|___| 路 路 路 路 2階 ___ _ _____ _ _______ _ _____ _ ___ |第1 |階|中隊|第2|階|中隊 | 第3|階|中隊|第4|階|中隊 | |___|段|__|__|段|___|___|段|__|__|段|___| |___ _ _____ _ _______ _ _____ _ ___| | | | | | | | | | | | | | |___|_|__|__|_|___|___|_|__|__|_|___|
兵舎の大きな出入口のひとつ(中隊名(「1a. Kompani」など)の標識が貼ってある)に入ると、そこは石敷きの土間になっています。そのまま真っ直ぐ進むと、裏口になります。表裏とも出入口の扉は寒冷地を除き晝夜開け放しになっています。
土間から数段高くなった床の左右に廊下が走っていて、その手前に手摺の付いた大きな階段があり、2階に通じています。廊下も階段も、重武装の兵隊2人が並んで駆け走ることのできる幅があります。
廊下には、両側に部屋が並んでいます。
兵舎には、こうした出入口が4箇所あり、4箇中隊が、それぞれ1箇所づつ使用します。
石敷きの土間は広いので、兵隊を集めて指示命令を出すのに使います。壁には黒板が吊ってあります。初年兵が覚えるようにと上官名を書いた紙や、中隊の標語も貼ってあります。
夜(消灯後、起床まで)は電灯が点き、不寝番が交代で張り番をしています。(不寝番は武装していませんが、銃剣術練習用の木銃を持っています)
中隊の各室配置
舎前 【1階】 舎後 舎前 【2階】 舎後 他中隊内務班 他中隊内務班 |____ ____| |____ ____| | | | | | 第5内務班 | | 第1内務班 | | (豫備) | | | |____ ____| |____ ____| |下士室 | | 雑庫 | |下士室 | | 雑庫 | |____| |____| |____| |____| |||||| |演習用具| | | |→扉無し | 置場 | → ↓| 吹抜 |階段|→階段下通抜 |____| 階段 | ←扉無し |||||| |下士室 | → ↑| ____ ____ |____| ____| | | | | | | |陣營具庫| |兵器庫 | | | |____| |____| | 第2内務班 | | | | | |____ ____| |将校室 | |被服庫 | | | |____| |____| | | | | | 中隊 | | 第3内務班 | |當番室 | 事務室| |____ ____| |____| |____| |下士室 | | 雑庫 | |中隊長室| 特務曹長室| |____| |____| |____ |____| | | |豫備室 | |曹長室 | | | |____| |____| | 第4内務班 | |豫備室 | |豫備室 | |____ ____| | | | | |下士室 | | 雑庫 | |____|__|____| |____|__|____|
1階廊下の左右には、両開扉の付いた陣営具庫、兵器庫、被服庫、雜庫(物置)が並んでいます。部隊によっては兵舎の裏に小さな物置を建てて、陣営具庫をそこに置くところもあります。
【陣営具庫】には、予備の家具(寝台、椅子、机など)、野営用の道具(天幕、標識類など)、文房具類(用箋、鉛筆など)をしまってあります。中隊陣営具掛伍長が助手を指揮して管理しますが、あまり用事はありません。
【兵器庫】は、中隊の予備兵器(小銃、銃剣、軍刀、拳銃、観測具など)と重火器(機関銃、擲弾筒、対戦車銃)、弾薬(各種銃弾、弾帯、手榴弾)、部品(交換用銃身、予備手入具など)などを収納し、中隊兵器掛軍曹が助手を指揮して管理します。機関銃の銃身交換や弾帯準備も、ここで作業します。小銃弾や薬莢の一個まで、員数が厳重に管理されており、銃弾は必要ある都度、兵器掛から交付され、演習で余った銃弾は確実に回収します。その時、薬莢の一個でも不足していようものなら、中隊の初年兵全員が紛失物が出てくるまで射撃場を這い回って探さなければなりません。戦闘になると回収は大雑把になりますが、兵器掛が兵器・弾薬の交付・回収をするのは変りありません。火薬の装填・抜取は危険なので、中隊ではなく部隊の銃工場で、部隊付銃工長(砲兵・工兵は火工長)の監督指導下で作業します。
【被服庫】では、予備の被服が分類・整頓されて、棚に整然と積み上げてあります。階級章や等級章などの徽章類も扱います。一番忙しいのが中隊被服掛軍曹です。被服は需要の多い消耗品なので、しょっちゅう交換支給をしなければならず、虫干しや皮革類の手入れも手間をくいます。いつも助手の上等兵が庫内で店番をしてます。被服掛軍曹は、仲間の下士に良い被服を優先して支給してやります。助手の上等兵は仲間の古兵に、同じく良い品物が行くようにします。(初年兵にはボロボロ被服がいくことになります)このように被服掛は兵隊生活に密着した仕事であるため、大変な勢力を持っています。中隊被服庫の被服は部隊の被服倉庫から補充され、また修理・加工・廃棄品などは部隊縫工場に廻され、そこで縫工長の指揮監督のもとに縫工・靴工・軍属(洗濯夫・臨時雇女工)が必要な作業をします。
【雑庫】は狭い物置で、予備の掃除道具など雑品がしまってあり、専任の掛もおりません。
各庫の作業は、繁忙時には掛下士官や助手だけでは手が足りませんので、必要ある都度、週番上等兵が中隊の兵卒を駆り集めてきたのを使役します。
____ 窓 __ 窓 _______ |書| ○刀架 |金| |類| 特務曹長 曹長 |櫃| |棚| ____ ____ |な| |な| |人事掛 | |給養掛 ||ど| |ど| | | | ||_| |_| |____| |____| | | | | | | ストーブ | | __ ○ __ | | 上| 人|臨 臨| 給|上 | | 等|助事|時 時|助養|等 | | 兵|手掛|勤 勤|手掛|兵 | | |__|務 中隊 務|__| | | __ 兵 事務室 兵 __ | | 軍| 週| | 週|上 | | 曹|下番| | 番|等 | | 伍|士 | | |兵 | |_長|__|_ _|__|__|___ 扉
____ 窓 ___ |書棚| 刀架| |__| ○| | 大尉 | | ____ | | | | | | |中隊長 | | | |____| | | | | 応接椅子 | ← | ___ | | |応接机| |中隊長室 | |___| | | | | 応接椅子 | | ○ | | ストーブ| | | |___ | |傳令用| | |_机_|_ 扉 __|_
____ 窓 __ 窓 _______ |書| ○刀架 | | |類| |寝 壁| |棚| ____ |臺 | |な| | 中尉 | | 棚|← 週番士官用 |ど| |(首席)| | | |_| |____| |___| | | |○刀架 ○刀架| | __ ストーブ __ | ← 将校室 |次席| | ○ | |三席| | | 少| | 准| | | | 尉| | 尉| | | |__| |__| | |四席| 少| | 見|五席| | | 尉| |士習| | | | 補| |官 | | | |__| |__| | | | |_______ _______|____ 扉
____ 窓 ___ || | |壁_____ | |棚 寝臺 内務班長| ||_____| 軍曹| ||_____ | || 寝臺 | | ||_____| 班附| || 寝臺 | 伍長| ||_____| | ← 下士室 ||__ | (人數により適當に配置が變る) ||机 | | 寝臺・壁棚は兵卒と同じ。 || | ○ | 個人専用の机(食卓兼用)がつく。 ||__| ストーブ| ||机 | _| || | 銃| ||__| 架| ||机 | 刀| || | 架| |___| 扉 __||_
__________________________| 隣 |__ | |___棚___________________|| の ||_ _ _ _ _ _ _ _ |銃 班 銃| 窓 |寝|| | | || | | || | | ||架 架|| |臺|| | | || | | || | | ||| ||| |_||_| |_||_| |_||_| |_||| ||| | | ==長腰掛== →右側も左と同じ配置 |手| _______ (營庭側が「舎前」、 |入| |__長_机__| ストーブ 塀側が「舎後」) |具| |_______| ○ |机| ==長腰掛== | _ _ _ _ _ _ _ 廊 | || | | || | | || | | ||| 下 ||| | || | | || | | || | | ||銃 銃|| 窓 |_||_| |_||_| |_||_| |_||架 隣 架|| |_________________________|| の ||_ _____棚___________________|| 班 ||_ ↓廊下を中央にして、左右の2部分に分かれており、ドアもなにも無い広間です。廊下をさらに行くと、次の内務班があって、班の間は板壁で仕切ってありますが、どこにもドアが無く、通路は素通しで行き来できます。
中隊には、戦争の無い時、兵隊が定員の半分しかいません。戦争になって動員令がくだると、豫備役兵(除隊して民間に戻った兵隊)を4年分、充員召集して人数を補充し、それで初めて戦時編成となるのです。なぜ4年分かというと、2年分あれば定員が埋まりそうですが、訓練中の二等卒は補充隊員として兵営に残していくので、それを埋めるのに、もう1年分の豫備役兵が要り、さらに留守隊の運営と初年兵教育の要員として、あと1年分の豫備役兵が要るからです。
人事掛特務曹長が戦時名簿を作って、小隊分隊ごとの編成を示します。だいたい内務班長が小隊付軍曹、内務班付伍長が分隊長となります。班付伍長は平時は2名(第1〜2分隊長)しか居りませんから、不足の2名(第3〜4分隊長)は充員召集した豫備役兵となります。現役下士は野戦部隊要員で出払ってしまうので、残留の留守隊幹部は殆どが充員召集の豫備役下士です。
動員準備として、あらかじめ平時から、誰は何小隊何分隊何手(小銃手、輕機關銃手など)と決めてある部隊もあります。特に砲兵は役割分担が細かいので、出動する場合は誰が何番砲の何番砲手という具合に決めてあります。
応召兵は空き内務班に押し込めるか、既存の内務班の寝台の間の床にじかに布団を敷いて寝るか、營庭に天幕を張って露営するか、營外の施設(学校、教会、邸宅、旅館など)を借りるかして、なんとか収容します。
急に出動する時は、充員召集などしている暇がありませんから、各班を合わせて、臨時に小隊を編成します。
例えば、非常呼集で營庭に集合した完全武装の兵隊を整列させ、中隊長が特務曹長に指示して、ここからここまでは第1分隊、というふうに列を区分し、「第1〜3分隊を○○少尉指揮の第1小隊とする。第4分隊は欠」と命令して、臨時の編成を組んでいきます。1箇小隊は4分隊という標準の編成はありますが、必ずそれに従わなければならない、というのものではなく、中隊長の判断で柔軟に編成します。
便所のことです。兵舎の裏側に別棟であります。兵舎からは屋根付渡廊下で行けるようになっています。下士卒用と將校用とは別になっています。
兵舎の裏側にあります。雨除け屋根の下に、単に水道管と流しが列になっているだけです。やはり屋根付渡廊下で行けます。洗濯代の無い兵隊は、ここで洗濯もします。洗面所と呼ぶべきところを、面洗所と云うのが独特の軍隊用語です。
軍属の洗濯親方が職人・徒弟を使って、被服の洗濯作業をします。昔の傭兵軍隊の時代から従軍洗濯婦として女性が大勢雇われていましたが、風紀上よろしくないとの理由でこれを廃止する部隊がほとんどで、今は護郷軍にその制度があるくらいです。有料なので、金の無い兵卒は中隊の面洗所で自分で洗濯してしまいます。
兵舎ごとに兵卒が自分の洗濯物を干す空地があります。盗難監視のため、中隊から當番が出て、いつも見張っています。
兵舎の裏手に、炊事場の隣りにくっついてあります。共同浴槽、洗場、脱衣場から成り、炊事の余った蒸気で湯を沸かします。
清潔を保つために毎日入浴を励行する事になっています。中隊ごとに時間を決めて順番に入浴します。しかし順番が遅いと、泥の混じった茶色い湯しか残っていません。また忙しい初年兵は、ゆっくり入浴する時間がありません。そこで何週間も風呂に入らないのが普通です。古兵も忙しければ二週間くらいは入らなくとも平気です。時間に余裕のある下士や一年志願兵だけが、ゆっくり入浴できます。
洗い場と脱衣場に、當番の古兵がいて、初年兵の入浴マナーが悪いと叱り飛ばします。また被服を監視して盗難を防止します。
花柳病に罹った者は、浴槽が別になっています。
大隊ごとに設けてあります(部隊によっては各大隊炊事場を統合して一棟のみ)。週番上等兵に指揮され、使役兵が数人で幾つかの食罐(バケツ)や薬缶をさげて内務班ごとに食事を取りに来ます。食事が終われば食罐を奇麗に洗って返します。
内部は、調理室・事務室・食品庫・控室(休憩室)に仕切られており、部隊付炊事長、部隊付炊事手、各中隊付炊事手・炊事卒が、忙しそうに働いています。明け方から夜遅くまで大変な重労働です。
兵卒用の賣店で、葉書や切手、手拭など日用雑貨の他、菓子・酒・茶・珈琲・煙草など嗜好品を並べて販売しており、椅子テーブル席があり喫茶店かわりにもなります。酒保商人が運営していますが、商品の内容は、部隊の酒保委員が許可します。兵隊用の販売窓口は各中隊からの當番があたります。
主に古兵や一年志願兵が利用します。一般の初年兵は軍務が忙しく、また酒保にたむろする古兵が怖いので、とてもこれません。錬兵休、就寝などの診断を受けた患者や、懲罰令による処罰者(禁足など)も利用できません。
また酒保で買込んだ飲食物を外に持ち出したり、武装したまま飲食してはいけない事になっています。(余り守られませんが)
酒保の2階にある下士倶楽部兼専用酒保です。週に1度は、準士官・下士がここで会食をします。下士は1階の酒保では飲食しません。下士専用の賣店があります。ここの売り子や給仕は軍属で、近所の小母さんや若い娘や少年や外地人の出稼ぎです。
聯隊本部の隣に、將校倶楽部があります。將校の昼食は會食形式で、ここの食堂でとります。他に喫煙室・面会室・撞球室・図書室・会議室・宿泊室・浴場・売店・庭園・厨房・當番長室・當番控室・從卒馬卒控室・乗馬厩舎があります。
宿泊室(食事付)には、応召の将校、まだ営外に住居の見つからない転任将校、聯隊長の許可を得た民間人などが泊まりますが、有料です。週番将校も利用します。
營門(部隊の正門)の正面にあります。聯隊本部・大隊本部が入っており、1階には會報室という日日命令(日常の部隊通報)の伝達所があり、毎日、各中隊の曹長が命令受領に集合します。隣に週番司令(夜間・休日当直の聯隊長代理将校)室があります。2階には、聯隊長室、旗手室(機密書類を保管してある金庫)、副官室、聯隊事務室、各委員事務室があります。
他に各大隊長室と各大隊事務室、信號室、電話交換室、会議室、傳令控室、斥候控室などがあります。
本部の前庭には國旗掲揚臺があり、日の出と共に、風紀衛兵が喇叭を吹いて國旗を掲揚し、日没と共に國旗を降下・収納します。聯合共和國軍隊である事を示す重要な標識です。聯隊旗は軍旗室に飾ってあって、掲揚はしません。軍旗衛兵が配置されています。大隊旗は前身部隊の傳統の隊旗を用いる事が多く、大隊長室に飾ってあります。中隊旗も嚮導標識として用いられ、また中隊単独で戰闘する時は軍令に従って行動していることを示す重要な標識となりますが、普段は中隊事務室で保管し、必要ある毎に出してきて使用します。
營門(部隊正門)の内側にあり、ここから營門、裏門、火薬庫、軍旗室、營倉に歩哨を出します。各中隊回り持ちで、優秀な兵隊を派遣します。下士の衛兵司令以下、各歩哨掛の上等兵に一等卒が3〜4人つきます。衛兵は完全軍装で着劒しており、銃には実弾を込めてあるので、威力満点です。喇叭手・鼓手も3組(3当直)おり、定刻になると營庭の真ん中に出ていって、東西南北に向け計4回、起床・食事などの喇叭と軍鼓を吹奏します。(それぞれにつき他部隊の号音と取り違えないように、最初に部隊譜を奏する)。聯隊長や将官が營門を出入りする時も、喇叭と軍鼓を鳴らしますから、なかなか忙しいのです。
勤務は交代で、立哨・休憩(仮眠可)・控(衛兵所に座って待機)の順番を繰り返します。
内部は、衛兵控室(営門に向かって土間となっていて、扉なしの開け放し)、休憩室(控室の続きで、奥に入った処、外からは見えないようになっている)、営倉(裏手)からなっています。
格子のはまった留置場が数室あって、ここに悪いことをした兵隊(懲罰令により重営倉・軽営倉に処せられた下士卒)が閉じこめられています。重営倉は、食事が1日に2度、塩と麺麭と水だけで、寝具もストーヴもありません。監視の衛兵が配置されています。中隊の戦友が、衛兵に煙草などの賄賂をやって、こっそり差入に来たり、心配性の中隊長が面会に来たりします。
部隊の正門。中に入った処に衛兵所(營倉付属)、面會所があり、門の外側脇の歩哨小屋には、常に營門歩哨が武装(銃剣を付けた小銃を持ち、背嚢を背負う)して立っています。出入を見ていて、まとまった部隊がやってくれば「部隊接近!」、高級将校がやってくれば「将官!」とか「上官!」と叫んで、衛兵所に知らせます。衛兵は、その都度、陸軍礼式令による敬礼(相手によって、いろいろ異なる)をしなければなりません。間違えると大變なので、優秀な兵隊にしか上番させず、衛兵を無事に勤め上げると、たいていは上等兵候補者となります。
部隊の裏側にある通用門。方角によって、「東門」「北門」などと呼びます。部隊と取引のある商人・職人が主に出入りします。ここにも歩哨が配置されています。営門と違って、のんびりしています。しかし意地の悪い上官は、こっそり裏門から入ってきて、衛兵ニ歩哨規則を云わせたりして苛めます。
衛兵所の近くにあって、兵隊に面會したい人が部隊を訪れた時は、ここに案内して面會させます。机と椅子があるだけです。普段はガランとしていますが、新兵の面会日には親兄弟・知人が大勢押し掛けるので、營庭にはみ出します。
営庭の隅にあって、軍醫と看護長・看護手・看護卒が勤務しており、毎日定時に、衛兵所に「診察喇叭」を吹奏させて診察希望者を集め、診察治療をします。軍醫室、事務室、診断室、治療室、藥室、休養室、病理試驗室、衛生材料庫があります。衛戍病院が兵營の隣にある場合は、藥室を置きません。重態になると、衛戎(えいじゅ)病院に送ります。衛戎地(駐屯地)の各部隊が共同して運営する病院で、各隊から要員が交代で詰めています。各診療科と入院病棟を整えた大病院から、素寒貧の小病院まで、駐屯部隊の數と規模により1〜4等の区分かあります。病院の薬局は衛生材料を備蓄し、各部隊に配給します。
銃工場、被服工場(縫工場、靴工場)に分かれて、それぞれ工長・工手・工卒が勤務しています。兵器・被服・軍靴の簡単な修繕・加工をします。華やかなのは被服工場です。臨時雇いの裁縫婦が大勢やってきて作業するので、殺風景な兵營の中では例外的にいつもここだけ春のようです。縫工兵になりたがる者も少なくありません。先任兵器掛将校室、事務室、将校室、上等工長室、工長室、工手室、工場、倉庫、車廠、雇傭人控室があります。
部隊の軍馬を一括収容します。馬の寝床が通路を挟んで並んでおり、馬の所属する中隊の厩週番上等兵や當番・馬卒が詰めて、寝藁の交換・秣の配給・水飼・馬手入・運動の世話をします。軍馬の管理は所属する中隊人事掛特務曹長の仕事です。
有線・無線の電氣信號の發受信場で、擔任将校以下、信號長・信號手・信號卒が晝夜勤務しており、無線アンテナや、配電室があり、戰用信號器材の整備・修繕・保管もします。
獸醫室、事務室、診療所、藥室、病馬厩、隔離厩があります。
傳鳩・軍犬をそれぞれ収容します。傳鳩長・軍犬長の管理下に傳鳩手・傳鳩卒、軍犬手・軍犬卒から出る當番が詰めて、世話をします。
厩舎の隣にあります。ふたつ一緒になっていることが多く、馬の蹄鐵交換・馬具修繕・傷病馬傳鳩軍犬の治療・軍用動物豫防衛生が仕事で、馬匹の多い部隊では忙しいところです。獸醫の指揮下、蹄鐡工長・蹄鐡工手・蹄鐡工卒が勤務しています。
厩舎の側にあり、ここで乗馬練習や調教をします。
部隊の全車輌を一括して格納し整備を行います。部隊兵器委員が管理します。駐車・配車は車輌の所属する中隊兵器掛の仕事です。部隊兵器委員の車両掛将校の指揮下にあり、車廠長の軍曹が實務を処理し、各中隊から出る當番・馬卒が整備をします。蹄鐡工長・蹄鐡工手・蹄鐡工卒が簡単な修繕・加工をします。
部隊の被服を一括して保管し整備を行います。部隊被服委員が管理し、被服倉庫長の軍曹が実務を処理します。ここから中隊の被服庫に、被服が配給されます。被服は常用被服(普段着)、戰用被服(出戰用の一張羅)など用途ごとに区分されて、夫々の倉庫に入っています。瓦斯マスク、靴、背嚢、彈藥盒、拳銃サック、バンドなども被服のうちです。
部隊の倉庫です。主に出戰用の携帯口糧・馬糧を保管します。部隊糧秣委員が管理し、糧秣倉庫長の軍曹が実務を処理します。燃料もここに備蓄されています。ストーブや炊事ボイラー用の練炭、車輌用の揮発油などです。ただし日々の食材は、炊事長が直接に納入業者から納品を受けて、自分の炊事場で検収・保管をします。
部隊の重火器を一括保管します。歩兵砲・歩兵戰車も、ここに収納されています。普段使用するものは各重火器中隊兵器掛が管理し、日頃は使わない豫備重火器も臨時編成部隊の分を含め、グリース詰で揃えてあります。部隊兵器委員の管理下にあり、砲廠長の軍曹が實務を處理します。
兵舎からなるべく離れた片隅にあり、高い土塁で周囲を囲ってあります。建物そのものも煉瓦造りで頑丈に出来ています。この中に部隊の彈火薬を保管します。ここで薬莢に火薬を詰めたり抜いたり、空包を調整したりします。部隊兵器委員が管理し、火工長(歩兵部隊は銃工長でも可)が実務を処理します。歩哨が配置されています。
部隊の運動場。戦時編成の全部隊が整列して分列行進する程度の広さがあります。周囲を兵舎・倉庫と聯隊本部が囲んでいます。舗装はしていないので、砂埃が舞ったり、雑草が生えたりします。
約500米四方の土地を塀あるいは柵で囲み、その中に上記の諸施設があります。許可無しの民間人は入れません。それどころか警備の歩哨に「誰かっ」と誰何(すいか)されて、答えずにいると、それが三度続いた後に、発砲されます。
ひとつの兵營に、ひとつの部隊が入っています。ただし部隊で臨時部隊を新たに編成する場合は、幾つかの部隊が同居することになります。例えば、歩兵第1聯隊(もとから兵舎に入っていた常備部隊)が戦争になって出征すると、あとには臨時に編成した歩兵第1聯隊補充隊(大隊規模で初年兵・補充要員・教育要員・傷病帰還兵から成る)が残されます。同時に、後備歩兵聯隊(戦時臨時編成部隊)用の大隊が同じ兵營内で急ぎ編成され(常備部隊出征後の空き兵舎を使用)慌ただしく出征します。さらに戦況の進展に伴い、獨立混成旅團用の獨立歩兵大隊が兵營内で幾つか編成され、出征して行きます。また總動員令が下令されれば、國民歩兵聯隊用の大隊が兵營内で編成され、これも内地警備に派遣されます。
ともすれば動員が錯綜して、上記の諸部隊が幾つか同時に兵營内で同居することも有り得ます。そのような時には、兵舎が不足するので、練兵場に天幕を張って幕營したり、近所の學校の校舎や教會堂を借りて宿営します。
演習で部隊が演習場に出かけると、そこには粗末な廠舎があって、雨露をしのげるようになっています。行軍途中の時は、野原にゴロ寝して露営したり、農家に分散して泊まる村落宿營をします。
部隊が駐屯している地域。複数の部隊がある場合は、最上級部隊長が衛戎司令官を兼務します。
★★ 營外居住 ★★
曹長の二等給以上の下士・准士官・將校は原則として兵營の外に住んで、部隊に通勤します。食事も炊事場のものは食べず、自分のお金を出して、晝食は下士官集會所や將校集會所の食事を食べ、朝晩は自宅で食べます。