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兵站線路の構成を解説します。

兵站線  →兵站線路とは          →概念図
軍直轄管區
      →前線
      →後方
軍兵站管區
      →兵站枝路
      →兵站末地
      →兵站終點
      →兵站地
      →兵站主地
占領地總督管區
      →占領地
      →集積主地
國軍總司令部直轄管區
      →海上・同盟國
留守軍管區
      →集積基地
      →兵站基地
      →兵站基地司令部支部
      →兵站始點

兵站線路とは
軍が出征すると、参謀本部第3部兵站線路班は、内地の留守部隊所在地から始り、出征軍所在地に至る輸送路を設定します。これを「兵站線路」と云い、線路上に必要な機関を設けます。なるべく鐵道を利用し、それが無い部分は道路上を自働車輸送します。自働車が通行不能な場合は、馬匹・徒歩輸送となります。また戦地が海外にある時は船舶輸送となります。緊急を要する輸送は航空機を利用します。
兵站線上を往復する軍隊・軍人軍属は軍用旅券(高等司令部・兵站司令部・同支部・兵站基地司令部・同支部で発行)を携帯し、鐵道・船舶・航空機に乗る場合は軍用輸送券(各部隊で発行)または便乗券(停車場司令部・碇泊場司令部・飛行場司令部で発行)をも併せて携帯しなければなりません。また物件の宰領者は運搬力供給券(兵站司令部・同支部が発行)と交換で運搬に必要な労力を提供されます。
線路上を通過する軍隊・軍人・軍属は、兵站司令部・同支部の定める諸規定には絶対に服従しなければなりません。  → top
【概念図】
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留守軍管區
【兵站始點】
兵站線路の始りが「兵站始點」で、留守部隊所在地に設定されます。留守部隊の近傍には平時から鐵道貨物驛がありますが、戰時にはそこに「停車場司令部」(兵站總監部鐵道線區司令部隷下)が設けられ、<留守部隊=兵站基地司令部>間の鐵道輸送の窓口となります。人馬や兵器など大切な物件には出征部隊から宰領者が出張してきて、輸送に付添います。貨物驛までは道路を使用しますが、鐵道引込線を兵營内に敷設してある部隊(主に戰車・重砲・工兵)もあり、また専用の軍用鐵道を利用する場合もあります。  → top
【兵站基地司令部支部】
必要に応じ留守師團管區内の交通要地に1箇設けられ、管區の留守部隊が出征部隊に転送するべき物件を引受け、また出征部隊から送還されてきた物件を各々の目的地に配送します。留守軍管區の兵站基地から遠い地方にある師團管區に限って設けます。全ての留守師團に設けられるわけではありません。  → top
【兵站基地】
軍管區内の交通要地に1箇設けれられ、「兵站基地司令部」(留守軍司令部隷下)を置きます。留守軍管區内の留守部隊が出征團隊に転送するべき物件を引受け、また出征部隊から送還されてきた物件を各々の目的地に配送します。  → top
【集積基地】
内地の交通要地に「集積基地」(兵站總監部直轄)を設け、ここで各軍管區の兵站基地より発送されてきた物件を取纏め、また各補給廠の発注により納入された物件を集積して、荷を組立て、出征部隊に発送します。また出征部隊から送還されてきた物件を各々の目的地に配送します。方面軍1箇につき1基地が対応しています。
海港である場合は、海運基地とも云います。附属の倉庫には、「糧秣集積廠」(人馬の糧食・燃料)「被服集積廠」(被服・装具など兵器以外の装備)「貨物集積廠」(それ以外の物品)があります。
それぞれの輸送には輸送指揮官が任命され(輸送兵員中の将校准士官の先任者)、輸送のあいだ兵員を指揮し、物件を保護します。輸送そのものは鐵道線區司令部(兵站總監部直轄)が計画実行し列車を仕立てます。輸送指揮官は停車場司令官の指示に従うことになります。
海上輸送の場合は、「船舶輸送司令部」(兵站總監部直轄)が輸送船・病院船・補助病院船を仕立て、航路を設定します。海軍は必要に応じ護衛艦艇を派遣して随伴させます。指定の港湾には「碇泊場司令部」(船舶輸送司令部の出先機關)があって、船舶・兵員・積荷の管理をします。
航空輸送の場合は、「航空路司令部」(兵站總監部直轄)が輸送機を仕立て、航路を設定します。飛行軍および防空司令部は必要に応じ護衛部隊を派遣して随伴させます。指定の飛行場には「飛行場司令部」(航空路司令部の出先機関)があって、輸送航空機・兵員・積荷の管理をします。  → top
國軍總司令部直轄管區
【海上及び同盟國】
戰時には、國軍總司令部に兵站總監部(参謀本部第3部その他必要な軍政機關にて構成)が置かれ、補給全般を監督・指揮します。出征軍司令部・占領地總督・留守軍司令部の管轄以外の地における兵站線路は、すべて兵站總監部の直轄となります。海上・同盟國を通過する兵站線路はみなそうです。  → top
占領地總督管區
【占領地】
戰線の前方移動により兵站線が伸び切った時には、集積主地を含む広大な地域に占領地總督管區(國家元首直属)を置き兵站線の維持管理を分担させます。身軽になった軍兵站監部は、兵站線路維持能力に余裕が出るので、前線部隊に追随して兵站線を新たに前方に延長する事ができます。
占領地總督は、占領地守備兵力兵站部(兵站司令部・集積主地をはじめとする兵站諸機關)をもって占領地内を通過する兵站線を維持管理します。  → top
【集積主地】
戰地主要の地に設ける中継補給基地です。海港である場合は、海運主地とも云います。方面軍1箇につき1基地が対応しています。基地には軍兵站監部が兵站司令部を置き、集積主地諸廠・倉庫(野戰砲兵本廠、野戰工兵本廠、野戰本倉庫)を運用して、出征部隊に発送すべき軍需品を集積し、需要の緩急に応じて兵站主地に輸送します。また出征部隊より送還されてきた物件を収容整理し、あるいは内地軍管區の集積基地に後送します。
開戦当初は軍兵站監部が設置しますが、軍が前進し、占領地總督がおかれると、その隷下となります。  → top
軍兵站管區
【兵站主地】
軍の兵站監部が前線後背部の交通要地に設置する大補給基地です。野戰諸廠(野戰砲兵廠、野戰工兵廠、野戰衛生材料廠、兵站病馬廠)・兵站諸機關()を運用して軍需品の蓄積・整理・前送・後送・分配をします。
兵站監部が常駐し、軍の補給を監督・指揮します。  → top
【兵站地】
集積主地から兵站主地を経て兵站終點に至る兵站線路上に約20km間隔で設けられた中継点です。兵站終點・兵站主地・管區境界・集積主地・交通分岐點・岐路終點など重要な兵站地には兵站司令部が置かれ、中間の兵站地には兵站司令部支部が置かれます。人馬の宿泊・給養、車輛の給油・整備、諸物件の逓送を任務とします。  → top
【兵站終點】
兵站線路の終る地点です。兵站司令部と倉庫、その他必要な機關が設けられ、補給物資を前線部隊に受渡し、傷病者・修理兵器などを後送する重要な中継地点です。
野戰部隊の輜重は兵站終點にある兵站倉庫まで軍需品の受領にやってきます。  → top
【兵站末地】
軍兵站管區が終り軍直轄管區に入る境界点です。
兵站輸送機関は兵站末地を越えて前方に進み、野戰部隊の輜重に補給することがあります。また野戰部隊の輜重が兵站末地を遥かに越えて兵站主地附近まで軍需品の受領にくる事もあります。このため野戰諸廠は支廠を兵站終點ないし必要ある都度その前方に進出せしめ、野戰部隊への補給の便を図ります。
開戦直後には戰線が収縮しているので、軍司令官は軍兵站管區を特別に設けない事があります。戰線が拡大前進するに伴い、軍司令官ははじめて兵站管區を設定し、兵站末地が常に戰線後方に追随するようにします。  → top
【兵站枝路】
野戰部隊の位置により兵站線路から枝道が分岐する事があります。枝路にも終點があり、小規模ながら兵站終點と同じ機能(兵站司令部・同支部以下)を備えています。  → top
軍直轄管區

【後方】
野戰倉庫が師團に1箇宛配当され、野戰での補給拠点となります。旅團・支隊・聯隊は必要に応じ自力で集積處を設けます。
彈藥大隊(歩兵彈藥縱列、砲兵彈藥縱列)、輜重兵大隊(糧食縱列)、架橋縱列、給水縱列、衛生隊、兵器隊、臨時病馬集合所、野戰病院などの車輛が後方道路を往復し、野戰憲兵隊が交通整理にあたります。  → top
【前線】
隊属輜重として大行李・小行李・その他の車輛があり、砲兵・騎兵は段列(行李を含む)を編成しています。
「大行李」とは、戰闘に直接関係しない物品を運搬する輜重を云い、主に人馬の糧食・飲用水、被服、車輛の燃料、陣營具(天幕など)を部隊に補給します。毎日ご飯を食べないと兵隊さんは動けなくなるので、糧食の補給にあたる大行李、兵站糧食縦列の各車輌は非常に忙しい往復を繰り返し、休む暇もありません。あまり同じ道を寝る間も惜しんで行ったり来たりするので、疲労の余り、とうとう頭が少しおかしくなる輜重輸卒がでるくらいです。
「小行李」は、戰闘に直接必要な物品を運搬する輜重を云い、彈藥を主として補給しますが、戰闘以外は銃砲を無闇には撃たないので、あんがい暇です。しかし戰闘間には第一線で発砲している直後に進出して彈藥補給を行い、また敵の遊撃隊にも狙われやすい危険で損害の多い仕事です。彈藥のほかに衛生材料(醫藥品)や携帯口糧(糧食とは扱いが違い、隊長の許可がないと無闇にたべられない戰闘食)、工具なども積載して、戰闘間の補給に供します。兵種によって小行李・大行李に積載する品目が違っています。
騎兵・砲兵は、大行李・小行李・観測車・信號車・工作車など砲車以外の車輛を一括して後方に控置し、これを「段列」と呼んでいます。中隊・聯隊ごとに段列があり、最近は独立して行動することの多い砲兵大隊にも段列ができました。
これらは(輜重兵大隊以外の後方車輛も)一括して「輜重」と呼ばれ、行軍の間は戰闘部隊の後方にまとまって追随してきて、必要あるつど前方に進出し部隊に補給を行い、それが終わると空車を曳いて師團の野戰倉庫や、さらには兵站末地の兵站倉庫あるいは野戰諸廠支部まで行き物品を補充してきます。特に行軍間の「輜重」と云えば、輸送部隊のほかに衛生隊や兵器隊などの非戰闘部隊・後方部隊もひっくるめた意味なので、糧食運搬部隊(輜重大隊)のみを指しているのではない事に留意しなければなりません。輜重の行軍順序は、すぐ必要になる部分から先頭にたつように定められており、通常は戰闘が始まると直ぐに前方に進出しなければならない衛生隊が第一番目を進みます。  → top
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