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憲兵司令部 stab de gendarmeri, head quarter of gendarmerie

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【憲兵司令部】stab de gendarmeri, gendarmerie head quarter

憲兵は陸軍大臣の命令を承け、軍人の犯罪を取締ります。さらに警察と同じく民間人をも取締ることができます。特に警察力の行届かない邊境や外地では、有力な武装警察として治安を維持します。
野戰軍に配属される野戰憲兵隊は内地の憲兵隊が動員編成しますが、これらは陸軍大臣の指揮下を離れて、野戰軍司令官の指揮下に入ります。憲兵條例により編成され、陸軍大臣の命令に服する「勅令憲兵」と呼ばれる普通の憲兵とは命令系統が違い、軍令によって編成され軍司令官の命令に服するので、野戰憲兵は「軍令憲兵」と呼びます。
憲兵司令部は3箇あって(内地1、外地2)、それぞれが憲兵隊(騎兵聯隊規模)を持っています。憲兵隊は軍に1箇宛あり、憲兵分隊を衛戍地(部隊駐屯地)と交通の要所に派遣します。外地では民間警察の代用ないし補助として、縣に1憲兵隊、縣下の各都市に憲兵分隊を置きます。1憲兵隊の持つ憲兵分隊の數は一定しておらず、最大19分隊から最少1分隊まで様々です。(平均は内地11分隊、外地4分隊)
憲兵隊は分隊(大隊乃至中隊相當)を要地に駐屯させます。内地では内務省の警察が發達しているので、餘り民間事件には關与しません。外地では警察組織が發達していないので、民間警察と同じ活動をします。また事變・戰争に際しては民間防衛を主導します。

憲兵司令官(中将): 内地憲兵司令官は民間防衛委員會常任委員を兼ねる
  副官部
    高級副官(憲兵中佐)
    専属副官(憲兵中尉)
    司令部附(一等主計正、一等主計、計手6、憲兵曹長6、馬卒5、給仕5)
  警務課長(憲兵大佐)
        書記14(憲兵曹長)、馬卒13、給仕13
    警務班長(中佐)
      警務掛主任(憲兵大尉)
        警務係長(憲兵中尉)
        警衛係長(憲兵少尉)
    司法班長(少佐)
      捜査掛主任(憲兵大尉)
        捜査係長(憲兵中尉)
    交通班長(少佐)
      第1掛主任(憲兵大尉)
        道路係長(憲兵中尉)
        鐵道係長(憲兵少尉)
      第2掛主任(憲兵大尉)
        軍港係長(憲兵中尉)
        要塞係長(憲兵少尉)
        飛行場係長(憲兵准尉)
  高等課長(憲兵大佐)
        書記10(憲兵曹長)、馬卒9、給仕9
    保安班長(中佐)
      保安掛主任(憲兵大尉)
        保安係長(憲兵中尉)
        檢閲係長(憲兵少尉)
        外事係長(憲兵准尉)
    防諜班長(少佐)
      防諜掛主任(憲兵大尉)
        防諜係長(憲兵中尉)
        傍受係長(憲兵中尉)
      特務掛主任(憲兵大尉)
        特務係長(憲兵中尉)
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【憲兵練習所】
陸軍に1箇のみあって、内地憲兵司令部に附属しており、内地・外地・野戰を問わず全憲兵の教育を擔當します。
憲兵は全くの志願兵で、全員が上等兵以上です。一等卒以下はおりません。
一般兵科部隊に在營5箇月以上の兵卒が憲兵志願すると、原隊からここに分遣され憲兵候補者として教育を受け、修了と同時に憲兵上等兵を拝命します。もとの所属兵科から憲兵に轉科し、現役満期となるまで憲兵として勤務し、さらに再役志願することが出来ます。營外居住が許可されるので、下宿から隊にかよいます。
憲兵将校は全て他兵科からの轉科者をもって補充します。いくら憲兵将校になりたくても士官學校の卒業時に憲兵を選ぶことはできません。他兵科の将校として勤務してから、志願して憲兵に轉科します。しかし憲兵は進級が遅く、身體に故障が生じて兵科将校としての勤務に耐えられない将校が療養がてら轉科してくるのが現状です。
しかし、その手足となって働く准士官・下士官は、憲兵上等兵から何回も再役志願を重ねて年季を積んできた熟練者揃いです。
憲兵練習所には、轉科志願者用の課程(丁)があり、また憲兵准士官下士官が憲兵将校となるための補習課程(丙、戊)もあります。更に将校の集合教育の為の課程(甲、乙)も用意されています。

所長(憲兵大佐)
  副官(憲兵大尉)
    書記(憲兵曹長4)、馬卒6、給仕6
幹事(憲兵中佐)
  部附(一等主計、計手3)、管理勤務分遣隊
    (一等軍醫、看護長3)
     (一等獸醫、蹄鉄工長3)
  兵器掛(憲兵大尉)、兵器勤務分遣隊
  教官(憲兵将校、陸軍教授)
    助教(憲兵下士)
  甲種學生(憲兵佐官)
  乙種學生(憲兵尉官)
  丙種學生(憲兵少尉候補者の憲兵准士官下士官)
  戊種學生15名(憲兵中尉候補者の憲兵准尉)
  丁種學生6名(他兵科からの轉科将校)
候補者隊長兼教官(憲兵少佐)
  副官(憲兵中尉)
    書記(憲兵特務曹長2、憲兵曹長4)、馬卒12
  中隊長兼教官(憲兵大尉2)
  區隊長兼教官(憲兵中尉8)
    憲兵候補者398名(他兵科からの轉科志願兵卒)3箇月修業  →top  →索引


★★憲兵部隊編成★★

憲兵は騎兵から分岐した兵科なので、全員が乗馬本分です。輕騎兵聯隊に準じた編成で、6箇中隊分の員數を持つのが標準です。隊として纏まって行動する事がなく、軍管區内の要所に分散配置されます。軍司令部ごとに1憲兵隊があり、動員下令になると、憲兵隊において野戰憲兵隊が編成され、軍司令部直轄と成って出征します。留守の憲兵隊は、平時と同じ編成を維持し、衛戍地の軍紀を正し、銃後の秩序を保ちます。
編成區分は一般の部隊とは異なり、大隊・中隊・小隊がありません。隊は本部と幾つかの分隊に區分し、最低限1歩兵師團につき1分隊が割當てられます。主要都市、交通要衝にも分隊が駐屯します。分隊は、民間の警察署に該當します。
分隊の擔當區域内で重要な地點があれば、そこに「分遣隊」を置きます。分隊の規模をひと廻り小さくしたミニ分隊で、警察分署に該當します。分隊も分遣隊も、主要駐屯地や交通要衝には「分駐所」(駐在所のようなもの)を置き、さらに必要あれば「派遣所」(交番のようなもの)を配置します。部隊で事件が起これば、ここから憲兵がサイドカーですぐに驅けつけます。
以上の分隊・分遣隊・分駐所・派遣所は番號を附けず、それぞれ所在する地名を冠して呼びます。
兵員が不足する場合は、獵兵、輕騎兵、海兵を補助憲兵として使用します。補助憲兵には警察權はありません。勅令憲兵では、一人一人を補助憲兵に指定する形式をとりますが、野戰の軍令憲兵は部隊ごと補助憲兵に指定。例えば「獵兵第1大隊」を第1野戰憲兵隊の補助憲兵に指定します。
憲兵将校准士官附の馬卒・從卒は獸醫部・經理部所属の雑卒で、憲兵でも補助憲兵でもありません。この他に隊本部や分隊の事務室は事務補助要員として軍属を雇います。若い女性を秘書、筆生、印字手、電話交換手、給仕などに採用するので、憲兵隊の内部は案外に普通のお役所のようで、厳めしい雰囲氣がありません。
編成例に示した分課は標準的なものです。分課は各憲兵司令官が決定するので、隊の實状に合わせて變化します。
憲兵隊本部では書類仕事が主で、實際の第一線警察活動は憲兵分隊が舞臺となります。憲兵は驛や盛り場を巡回して軍紀風紀の取締をしますが、私服で探偵も行い、一般人を装って應召者に近づき軍隊の感想を聴き出して反軍思想を探ったり、流言蜚語を蒐集したりします。また政治や宗教の秘密結社、過激思想團體、不審外國人などの監視を行い、尾行、信書の檢閲、電波傍聴、電話盗聴など、防諜活動も行います。
海軍には憲兵が無く、陸軍憲兵が代りをします。軍艦の上では先任衛兵伍長(機關科は特務下士)という古参下士が部下の衛兵伍長を指揮して艦内警察の役目をします。犯罪乗組員が出ると大抵は艦長が懲罰を下して一件落着としますが、刑法に触れる重大事件の時には、仕方なく軍港の憲兵隊に引渡します。  →top
【憲兵隊】gendarmeri, gendarmerie
編成例:

隊本部(庶務班、警務班、高等班)・・・軍司令部所在地
  A分隊本部(庶務掛、警務掛、高等掛)・・・師團司令部所在地
      G分駐所・・・旅團司令部所在地
        H派遣所・・・聯隊駐屯地
        I派遣所・・・大鐵道驛
    J分遣隊・・・要塞司令部所在地
      K分駐所
        L派遣所
  B分隊
  C分隊
  D分隊
  E分隊
  F分隊  →戻る  →索引に戻る


軍装
(輕騎兵と同じ軍装です。オートバイもしくはサイドカーで移動するので、上等兵でも、帯刀・拳銃携帯・長靴で、スマートです。軍刀は刃を附けてあって、ちゃんと斬れるようになっています。小銃は持ちません。軍の警察官なので、捕縄・手錠・憲兵手牒を携帯します。腕には憲兵腕章を巻きます。補助憲兵も同じく腕章を巻いて現在、憲兵業務に従事していることを明示します。腕章は正規と補助とでは文字色ないし地色が違っており、それで區別します。補助憲兵は所属兵科の軍装と武装です。)

移動手段
(各分隊は管内の實状に合せて、乗馬・自働二輪車・側車附二輪自働車・小型〜大型乗用車・装甲車を備えており、その配備は隊により異ります。車輛の侵入が不可能な山地では乗馬が主となり、また道路が整備された都市部では自働二輪車・自働車が主となります。邊境では暴動鎮壓のために装甲車が配備されます。)  →top


【派遣所】standey, stand
軍曹、伍長、上等兵4
大隊規模以上の部隊駐屯地には必ずあります。民間警察で云う巡査駐在所や交番のようなものです。休暇・外出兵を取締り、脱走兵を捕えるのが主な仕事です。盛場で兵隊が酔って暴れると、すぐに憲兵がお迎えに来て自働車や側車(サイドカー)に載せて連れて行きます。
【分駐所】branchey, branch
特務曹長、馬卒
  軍曹、伍長2、上等兵10
軍隊の駐屯地ではなくとも、交通の要衝・地方都市には分駐所があります。民間警察で云えば、警部補駐在所に該當します。
【分遣隊】detachiment, detachment
憲兵分遣隊長(中尉、少尉、准尉のいずれか)、馬卒
  庶務掛(曹長)、給仕
  警務掛(曹長)
  捜査掛(軍曹)
  高等掛(軍曹)
    上等兵13
分隊の管轄區域が廣い場合は、遠隔地に分遣隊を置きます。分隊と同じ働きをします。民間警察で云えば、分署に該當します。
【分隊本部】sekci, section
憲兵分隊長(少佐若しくは大尉)、馬卒
庶務掛(特務曹長)、馬卒、給仕
警務掛(中尉)、馬卒
捜査掛(少尉)、馬卒
高等掛(准尉)、馬卒
曹長、軍曹2、伍長3、上等兵15
師團司令部及び鎮守府所在地には必ずあります。民間警察で云う警察署にあたります。
【隊本部】gendarmeri, gendarmerie

憲兵隊長(大佐)、馬卒
副官(大尉)、馬卒
      書記2(曹長)、給仕
警務班長(中佐)、馬卒
      書記2(曹長)、給仕
   警務掛主任(大尉)、馬卒
      警務係長(中尉)、給仕
      警衛係長(少尉)
   捜査掛主任(大尉)、馬卒
      捜査係長(中尉)、給仕
   交通掛主任(大尉)、馬卒
      道路係長(中尉)、給仕
      鐵道係長(少尉)
      軍港要塞係長(准尉)
      飛行場主任(特務曹長)
高等班長(少佐)、馬卒
   保安掛主任(大尉)、馬卒
      保安係長(中尉)、給仕
      檢閲係長(少尉)
      外事係長(准尉)
   防諜掛主任(大尉)、馬卒
      防諜係長(中尉)、給仕
      傍受係長(少尉)
      特務係長(准尉)
本部勤務憲兵(分隊に所属せざる准士官・下士卒)
軍司令部所在地に必ずあります。民間警察で云う縣警察部に該當しますが、管轄範囲は數縣にまたがっています。また諜報任務も兼ねています。
分課の説明: 「警務掛」とは警察活動一般に關する事項を取扱う部署で、警務(制服憲兵の指揮に任ずる)、警衛(事件現場の保全、要人の警護)という仕事があります。首府では要人が多いので警衛に多くの員數を動員することが就中です。要注意人物には護衛名目で私服憲兵を附け動静を把握します。
「交通掛」とは軍隊の移動に伴う交通統制を計畫・實施する部署で、よく演習の行軍時に憲兵が辻で交通整理をしているのがそれです。また鐵道驛・同分岐點・驛逓(主要國道の一日行程ごとに設置)・軍用道路・飛行場・軍港・要塞地帯の監視をし、不審者を取締ります。
「保安掛」とは軍隊の秩序を亂す非合法結社の監視と、軍隊内部に叛亂・抗命などを促す過激思想が浸透するのを防遏する部署で、民間警察と協力して危険人物・不審外國人の監視・通信の檢閲を行います。民間人であっても反軍思想を持っていないかを密かに探ります。また軍に對する兵士・民間人の感想を調査したりもします。
「防諜掛」とは参謀本部第2部の防諜作戰を實施する現場です。間諜の驅逐を目的とし、要注意人物の身邊調査や監視・尾行、電信電話書翰をこっそり傍受したり勝手に封を開いたり、間諜(スパイ)が本國に發する電波通信を檢出して、逮捕の證拠を固めます。なかでも「特務」と呼ばれる班は、憲兵の身分を隠し變装して民間人になりすまし、さまざまな技巧を弄して敵方間諜に接触し、その撲滅に奮励します。非合法團軆の幹部構成員になりすまして妨害工作に従事することもあります。

【憲兵取扱年間犯罪人員】西比利亜派遣方面軍隷下の野戰憲兵隊取扱事件を除く
軍人670(海軍254)、軍属39(海軍13)、民間人1,909(女43)、外國人33(女1)
逮捕 軍人558(海軍196)、軍属24(海軍11)、民間人1,810(女41)、外國人25(女1)
自首 軍人29(海軍19)、軍属0、民間人43(女0)、外國人0
巡査ヨリ引渡シタル者 軍人73(海軍34)、軍属5(海軍1)、民間人9(女0)、外國人0
其他の者ヨリ引渡タル者 軍人10(海軍5)、軍属1(海軍1)、民間人45(女2)、外國人8(女0)

逮捕ノ原因
官吏ノ告發 軍人115(海軍68)、軍属2(海軍1)、民間人587(女13)、外國人6(女0)
人民ノ告發 軍人5(海軍2)、軍属0、民間人18(女0)、外國人0
告訴    軍人37(海軍115)、軍属2(海軍1)、民間人43(女4)、外國人2(女0)
告發告訴ニ依ラサル者 軍人401(海軍115)、軍属20(海軍9)、民間人1,121(女24)、外國人16(女1)

逮捕者
憲兵ノミニテ逮捕 軍人542(海軍185)、軍属24(海軍11)、民間人1,715(女41)、外國人0
巡査ト共ニ逮捕  軍人15(海軍10)、軍属0、民間人48(女0)、外國人0
人民ト共ニ逮捕  軍人1(海軍1)、軍属0、民間人4(女0)、外國人2(女0)
巡査及人民ト共ニ逮捕 軍人0、軍属0、民間人2(女0)、外國人0
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